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Channel: 野球:海外/独立リーグ
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アジア大会で見えた野球普及への課題――野球途上国と日本に作用すべき韓国の「協力」と「競争」

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○アジア大会野球競技存続問題に対する韓国の危機感仁川アジア競技大会(以下、アジア大会)を終えてアジアにおける野球の普及とレベルアップの必要性を最も痛感したのは開催国である韓国であったように思う。ペナントレースを一時中断してまでプロのトップ選手を代表に選出したこともあって、社会人で代表を構成した日本に比べ韓国では野球競技に対する注目が高かった。元メジャーリーガーのパク・チャノや各種国際大会で「国民打者」として活躍したイ・スンヨプ(サムソン)を解説に呼ぶくらい、テレビ局の側も放送に力を入れていた。韓国代表は準決勝序盤若干苦戦し、決勝戦は薄氷を踏むような勝利であったものの、大会全体を通して見れば圧倒的な戦力差を見せつけた。金メダルを獲得できれば兵役未了者は事実上の兵役免除を手にすることができるが、予選リーグ3試合を終えた段階では多くの韓国人がそうなることを確信したであろう。「このレベルの相手にプロの一線級の選手をぶつけて獲る金メダルに何の意味があるのか?」「アジア大会の野球競技は所詮プロ野球選手の兵役問題解決手段にすぎない。」このような声が挙がり、ファンから現状でのアジア大会野球競技の開催意義に疑問が呈されるようになってしまった。もっとも野球に限らず、アジア大会が有望な競技者の兵役問題解決の場になっているのは事実であり、だからこそKBOとしてもアジア大会での野球競技存続と野球の五輪種目復帰を願っているのであろう。またファンの側でも、北京五輪の快挙が頭に焼き付いているので、もし野球が五輪種目復帰となれば喜ぶ人が多いのではないだろうか。だがアジア大会に出場した国がそこまで多くない上にその国家間でのレベル差が大きい現状では、五輪種目復帰どころかアジア大会での存続すら危ういことを韓国の野球関係者とファンは認識したであろう。「韓国野球の伝え手」である室井昌也氏は取材活動を通じてこの現状を問題視し、日本球界が果たすべき役割について問題提起している。アジア大会で見えた野球普及への課題野球途上国と日本が発展するための提案室井氏のコラムでは日本市場の将来性に対する疑問とアジア進出が持つ可能性を指摘しながら、NPB球団が球団毎に担当国を決めて人的物的両面の支援を行うこと、各球団が青年海外協力隊による野球支援の窓口となることなどを提案している。だがコラム内にもあるように、この提案で各球団が足並みを揃えることは難しいように思う。親会社が海外事業に積極的であればビジネスとして一定のメリットがあるかもしれないが、そうでない場合は支援をするメリットがほとんどなく、事実上ボランティアということになってしまう。アジア大会の野球競技そのものがそこまで注目されていない日本においては、今回のアジア大会が契機となって支援活動にNPB全体レベルの大きな変化を見込むことは困難であるように思う。今回のアジア大会を契機として、ということであれば、むしろ私は韓国にこそ変革が求められるように思う。数少ない兵役問題解決手段であるアジア大会で野球が実施されなくなれば各球団が被るデメリットが大きくなるので、アジア大会での野球存続に対する韓国の危機感は日本とは比べものにならないほど大きいはずである。今後兵役法の体育要員に関する規定に変更が加えられて兵役の免除が複数の国際大会の成績によるポイント制に移行する可能性があり、その場合はアジア大会の金メダルのみで徴兵免除を得られなくなる公算が高いが、それでもアジア大会すら野球が存続できないようでは五輪復帰への道も完全に断たれてしまうで、アジア大会で野球を存続させることは最低限のこことして求められる。韓国から他のアジア諸国への野球支援拡大がもっと議論されることを期待している。○韓国による野球支援の現状アジアにおける野球普及の課題が露呈された今大会であったが、そこに至るまで韓国は野球普及に携わってこなかったのだろうか。野球用具の寄付という次元を超えた支援、具体的には指導者の派遣などの人的交流について韓国の報道を元にして確認していこう。キム・インシクへのインタビューによると、2000年代に入り、プロでの指導歴がある人物を含むKBA(大韓野球協会)関係者が短期間ながら東南アジアに派遣されるようになった。2002年から2004年にはホ・グヨンとユン・ジョンヒョンがタイで1週間から10日ずつ野球クリニックを開催、2006~2007年には協会の支援を受けたパク・ヨンジン、イ・チュンスン、シン・ヒョンソクがイラン、パキスタン、ウズベキスタンに用具を支援して技術指導も行った。シン・ヒョンソクは当初パキスタンで1週間指導するのみの予定であったが、パキスタンの協会からの要望で再びパキスタンに渡り、2007年のアジア野球選手権大会ではパキスタン代表のコーチも務めた。2010から2012年にかけてはファン・ドンフンがパキスタンに2~3ヶ月ずつ滞在して基礎から野球を教えた。また2010年にはホ・グヨンの紹介でKOICA(韓国国際協力団)がカンボジアで野球ボランティア活動に従事する野球専門家1名を派遣したこともあった。一方でファン・ドンフンがパキスタンで指導した際にKBAから受けた報酬は1000ドル程度にすぎず、2013年以降はKBAやKBOによる公式支援を受けた活動も行われていないという。またKOICAが派遣するボランティア人員のうち国際協力要員に関して制度自体が2016年に廃止されることとなったという問題点もスポーツ記者のパク・トンヒが指摘している。2011年にスリランカに派遣されていた国際協力要員の1人が落雷事故に遭って死亡し、国際協力要員に対する管理不足が問題視されたためである。国際協力要員はボランティア派遣の一形態に過ぎないが軍隊の代替服務として利用できる点に特徴があった。 http://sports.news.naver.com/sports/index.nhn?category=kbo&ctg=news&mod=read&office_id=241&article_id=0002257823http://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=sec&sid1=104&oid=001&aid=0001840653 http://sports.news.naver.com/sports/index.nhn?category=kbo&ctg=news&mod=read&office_id=295&article_id=0000001130 続いて現地のインフラ整備に関しても確認してみよう。球場建設など現地インフラの整備は費用が膨大にかかるため、用具の支援とは異なりKBAやKBOが主体となって援助することは難しい。そのような中で2009年、ホ・グヨンは1億ウォンをかけてカンボジアに自分の名前を冠した球場を建設した。2011年にはポスコ建設が球場施設整備のため1万ドルを寄付している。また2013年の年末段階ではまだ工事が完了していないものの、ホ・グヨンがハナ銀行による2億ウォンの支援を元にベトナムのホーチミンに野球場を建設している。公式的支援が難しい中でホ・グヨン個人の努力と現地に拠点を持つ韓国企業の助力で整備をしている状態と言える。野球普及活動への助力と企業という観点から考えるとき、普及活動を手助けするのが韓国企業でなく東南アジアの企業であればより意義があるように思う。そのような取り組みは多くはないものと見られるが、それでもゼロではないことには留意すべきであろう。 2013年12月、韓国のウォンドン中学校野球部がカンボジアに遠征をして現地のアマチュアチームであるプノンペンブルーウェーブスと親善試合を行った。ウォンドン中学校は廃校の危機にあった地方の中学校であったが、ホ・グヨンはそれを防ぐために野球部を創立し、創部2年目で全国大会優勝を果たした。プノンペンブルーウェーブスとの親善試合は、ホ・グヨンがカンボジアで野球普及に努めて球場を造った縁で実現したものであるが、韓国の中学生のカンボジアまでの移動を支援したのはマレーシアの航空会社であるエアアジアXであった。エアアジアXの最高経営責任者トニー・フェルナンデスが所有しているサッカーイングランドプレミアリーグのQPRにパク・チソンが所属したことも関係してか、エアアジアXは韓国国内13チームの他に日本、タイ、中国から各1チームも参加した韓国ピョンチャンで開かれた少年サッカー大会のスポンサーを務めたこともある。そのエアアジアXがスポーツ交流として野球にも目を付けたことが注目される。プノンペンブルーウェーブスとウォンドン中学校の親善試合は野球を通じた韓国とカンボジアの交流というもの以上の意味を持つかもしれない。野球支援と言えば野球先進国から野球後発国への一方的な援助に終わることが多いが、こういった双方向的取り組みがなされ東南アジアでも注目する企業が現れることで支援が一時的なものに終わることを防ぐことが期待される。アジア野球連盟の議長国が韓国ではない現在、以前に比べKBAやKBOを通じた野球支援が表立っては見えてこず、規模が縮小されている可能性もあるが、野球支援に関する取り組み自体が完全に消滅した訳ではないようである。 http://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=sec&sid1=103&oid=015&aid=0003144956 ○「協力」と「競争」先ほどの室井氏の提案の特徴はNPB球団間の競争原理を利用して支援を充実させようという点にあると思われる。競争原理を利用するという考えは非常に興味深いものであるが、この提案を実現するには球団間の顕著な温度差が障害となる。確かに野球球団の親会社には大企業が多いが、その全てが外需を必要としている訳ではない。また海外事業を展開している企業であってもすでに他の形で海外に企業名を広めようとしているだろう。野球の基盤がない国に目を向けるよりも、韓国プロ野球のタイトルスポンサーをしているヤクルトや韓国人選手の獲得に積極的なオリックスのように、野球に対する関心が既に高く市場規模もそれなりに大きい韓国に着目する方が手っ取り早いという部分もある。それに「アジアの野球途上国・地域」とはいっても、ベトナムのように国内の野球連盟すら整備されていない国も含まれており一括りにするのは難しく、球団間の競争原理に頼ろうとすると比較的受け入れ体制の整った国にしか支援する球団が現れてこない恐れもある。 NPB球団間の競争原理が成り立つのかは疑問であるが、こういった国際協力活動に競争原理を持ち込むという考え方は有効であるように思う。単なる奉仕活動では継続的な援助は難しいかもしれないが、そこに何らかの利害関係が生じることによって支援は一歩先の段階に進む可能性を持っているように思う。私はNPBの球団間以上に日韓の野球界の間で国際協力活動に競争原理が働くことを期待している。韓国側の視点でみるとアジア諸国への野球支援は韓国よりも日本の方が一歩も二歩も先を進んでいる状態にある。一方日本の側から見るとどうであろうか。現場に近い場所で野球支援と関わっている人はともかく、それ以外の場所からどれだけ韓国の側の活動を把握しているのか疑問である。 9月後半、ペナントレース真っ只中の日本では一部コアなファンを除いてアジア大会野球競技の存在すら気にとめていなかった。ファンの目が他国の野球に向かない状態ではNPBがアジア各国の野球に対する危機感を持つこともそこまでないだろう。そうであれば日本内部だけでなく外部からも変化を促す動きが必要になってくる。だからこそ、日本以上に危機感を持っているであろう韓国球界の役割が重要になってくるように思う。KBO技術委員長のキム・インシクがアジア大会存続に対する危機感を口にしている韓国球界の方がNPBよりはまだ期待できるのではないか。韓国では今季までSKで監督を務めたイ・マンスが今月以降ラオスに行き来しながら野球普及活動を行う意志を示している。自身がこれまで野球支援に関わっていたラオスに自らの足で直接赴き、継続的な支援を行おうとしているのだろう。さらにイ・マンスの目は周辺のカンボジア、ベトナム、タイなどにも向けられている。これはあくまでもイ・マンスの個人的な活動であろうが、選手として実績を残し今年まで監督だった人物がラオスに渡るというインパクトは大きい。これを契機にKBAやKBOが再び野球関係者の派遣事業に積極的に取り組むことになれば、と思う。草の根レベルの普及活動はそれ自体が直接的援助でもあるが、さらなる支援を引き出すための嚆矢としての役割も担っているように思う。日韓野球界の公式的な取り組みが活発になることでそれらの活動にも目が向けられるとより安定的、継続的な支援を望むことができるようになるのではないかと思う。 http://sports.news.naver.com/sports/index.nhn?category=kbo&ctg=news&mod=read&office_id=295&article_id=0000001269

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