気まぐれなスケジュール設定に、急遽サンチアゴに戻ることになった。 当初5日の金曜はオフで、6,7日の土日についてはシリーズの趨勢に応じて発表ということだったが、サンチアゴでの第2戦が試合前の雨でキャンセルされたせいか、パナマシティに戻って数少ないプロベイスの情報であるTVMAXのサイトを調べると、4日の試合にカバジェロスが勝利、シリーズに王手をかけ、5日にサンチアゴで試合をすることになったと書いてある。6日の深夜帰国に途に就く予定だったので、パナマシティでゆっくり過ごそうかと思っていたが、そうもいかない。急遽サンチアゴに戻ることにした。 しかし、天気予報は最悪。サンチアゴまでは約200キロ、バスで4時間。ぎりぎりのタイミングまで待ってバスに乗った。乗った途端の大雨。おまけに大渋滞でさっそく車は動かない。幸いサンチアゴでは雨は降っておらず、バスがサンチアゴの町に入ると、ナイター照明がともっているのが見えた。 試合は3回まで進んでいた。初回にビジターのカバジェロスが3点を入れ、2回裏に後のないブラボスが1点を返している。 優勝が決まるかもしれないというこの大一番にもかかわらずスタンドは閑散としていた。2層式の巨大な内野スタンドには150人ほどの観客しかいなかった。熱狂的な声援もないその様子はアマチュア野球のそれだ。スタンド内には出店も出ておらず、盛り上がり的には田舎町のアグアデュルセの方が上だ。飲食店と言えばスタンド前にひとつ、タコスやホットドッグなどを売る小屋があるだけだ。アグアデュルセのそれと同様、注文まで随分と待たされる上、注文からもさらにまたされる。大した客数をさばくわけでもないのに、まともに待っていれば、1イニングは見逃すことになる。腹が空いていたが、ここで食べるのはあきらめた。
(ブラボズでひとり気を吐き2安打を放った捕手のレイナ)試合は中盤まで3対1のまま膠着状態に。6回にようやくブラボスが意地を見せ、1点を返し、8回裏にさらに同点のチャンスを迎えた。ここでカバジェロスベンチは、クローザーのアコスタを投入、後続を断ち切った。 最後はドミニカ人クローザー、アコスタがイニングまたぎで9回を3者凡退にとって、カバジェロスの勝利。優勝の瞬間もスタンドは歓声が湧くこともなく、ファンは、ああ試合が終わった、みたいな感じでそそくさと家路についていった。 フィールドはそれなりに湧いた。バッテリーが抱き合い、ベンチから選手が飛び出し、そのあとに監督、コーチ陣が続く。ただし、マウンドで輪を作るのは選手だけで、指導者たちはいつもの勝ちゲーム同様、ベンチまで選手たちをハイタッチで出迎えただけだった。 その後、このリーグを取り上げる唯一のメディアと言っていいTV-MAXによる監督インタビューが行われた。記者に呼び出されてベンチ前に出てきたフリオ・モスキーラ監督にひとりの選手から氷水の祝杯が浴びせられた。「冷たいよ」とモスキーラ監督はユニフォームを脱いでインタビューに応じた。 優勝らしいシーンはそれまでだった。チーム一同の写真を撮ることもなく、選手たちは帰り支度を整えるためロッカールームへ消えて行った。チームはこの後、月末にニカラグで開かれるラテンアメリカシリーズに出場するが、それまでの2週間強の空白期間についてコーチに尋ねたが、まだ何も知らない、という答えが返ってきただけだあった。 ストレート負けでシリーズを逃したブラボスの一同は、すでに荷物をまとめていた。シリーズ終了の瞬間にチームは解散する。来シーズンは、メンバーを大幅に入れ替えたチームに変わることだろう。そもそも来シーズンにこのチームが合うかどうかもわからない。一同にとってそんなことは大きな関心事ではなく、この夏、どこでプレーするか、これからリクルート活動が本格化する。昨年は阪神に在籍していたネルソン・ペレスは、すでに四国アイランドリーグplusの愛媛マンダリンパイレーツに行先が決まったという。 ブラボスの一同はロッカールームで監督の訓話を聞いた後、解散した。明日には皆、家庭に戻るのだろう。 こうして、パナマリーグ、プロベイスの2か月半弱の短いシーズンが終わった。 翌朝、2紙ほど目を通してみた。しかし、ともにプロベイスのチャンピオン決定についてなにも報道していなかった。(この試合、2安打で打点もあげ活躍したガザウェイ)
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