昨オフ、2球団が移転したメキシカンリーグで、今年も2球団が撤退することになった。今シーズン、デルフィネス・デ・シウダーデルカルメンを受け継ぐ形でデュランゴに誕生したヘネラルズは、わずか1年で撤退することに。この球団は買収先もいまだ見つからない状況で球団身売りや移転ではなく廃止の方向で動いている。 移転に際して行われた球場の修築が遅れ、地元ファンへのお披露目が開幕後ひと月も経った5月頭になったこともあり、いまひとつ盛り上がりかけた上、球団の財政難から給与の遅配などもあったという。財政難はチーム編成にも影響を及ぼし、シーズン後半になって、主砲のキューバ人、ヤディル・ドレイクを日本ハムに取られ(ドレイクはトレード時点ですでに規定打席数に達していたため、.385で首位打者に輝いている)、リーグ記録の35試合連続ヒットを記録したダニエル・マヨラも、同地区の資金力豊富なモンテレーに「売ら」ざるを得なくなった。マヨラは今シーズン、ドレイクに次ぐ打率.370を残している。 結局ヘネラルズはシーズンを43勝66敗の北地区最下位で終えた。44試合のホームゲームの平均観客数はリーグ16球団中7位の4094人であるから決して悪くはなかったが、この町のプロ野球に2年目は訪れないことになった。この結果、来季のメキシカンリーグは15球団体制となる模様だが、これだと、スケジューリングに支障がでるので、来季終了後にもう1球団削減されるとの噂が早くも流れている。その第1候補として囁かれているのは、今や強豪となったレオーネス・デ・ユカタンとオーナーを同じくするバキュエロス・デ・ラグナだ。 昨シーズンの打点王リッキー・アルバレスを姉妹球団であるユカタンに「売り渡した」のをファンは見限ったようで、観客動員数は1試合平均4396人とリーグ上位半分以上に入っているが、昨季の5395人と比べると18.5%の大幅減である。今季は、60勝49敗で勝ち越しながら、「北高南低」の傾向のため、惜しくもプレーオフ進出を逃している。(バキュエロスのホーム、パルケ・レボルシオン/トレオン) 球団の移転に踏み切るのは、名門ロッホデルアギラ・デ・ベラクルスだ。首都メキシコシティの大西洋側の外港であるベラクルスには、リーグ発足以前の1903年に鷲を意味するアギラ石油会社により最初のチームが設立されて以来、いくつものチームがフランチャイズを置いてきた。1937年の初優勝以来、最近では2012年のペナント獲得まで6回の優勝を誇る野球の歴史をもつこの町であるが、近年観客動員は落ち込み、身売りや移転の噂は絶えなかった。今季の1試合あたりのホームゲームの動員数は2661人とリーグ下位4番目。その上、州政府からの補助金がここ数年カットされたため、慢性的な財政難にあえいでいた。今季は5割を割る勝率ながら、先述した「北高南低」のおかげで、新球団ブラボス・デ・レオンとのワイルドカード・プレーオフを地元で開催することができたが、そのポストシーズンゲームでも4279人の観客しか集めることができず、ここで一旦、フランチャイズの歴史に幕を下ろすことになった。(アギラスのホーム、エスタディオ・ウニベルサリオ・ベト・アビラ/ベラクルス) アギラスの移転先は、アメリカとの国境にある町、ヌエボラレドだ。2008年に完成した比較的新しく12000席をもつエスタディオ・ヌエボラレドを本拠とする予定である。チーム名は、かつてこの町にあったメキシカンリーグ優勝5回の名門、テコロテス(オウルズ)を継承する。メキシコでは町とチーム名は不可分の関係にあり、チームの系譜に関係なく、その町にあったかつてのチーム名を新球団が名乗ることが多い。 旧テコスは、テコスは、1980年代から1990年代かけて全盛を誇ったチームで、1985年から1993年までに5回チャンピオンシップに出場、1989年にはメキシコ・チャンピオンに輝いている。ペナントを勝ち取った。 1995年には、後に来日し、横浜ベイスターズで活躍したプエルトリコ人、ボイ・ロドリゲスもプレーしている。 ヌエボラレドはメキシカンリーグがメジャーリーグに対抗した1940年代の黄金期からの古いフランチャイズ。1985年から2003年(1995年を除く)の間は、国境であるリオ・グランデを越えたテキサス州ラレドでも試合を行い、「テコロテス・デ・ドスラレド」(「ドス」は「ふたつ」の意)を名乗っていた。フランチャイズの歴史は2003年シーズンで一旦途絶えるが、その後新球場の建設を受けて、アグアスカリエンテスからチームを引き抜き、2008年に復活、しかし市の中心から3キロ半ほどの1947年から使用していた旧球場、パルケ・ラ・フンタに比べ、約10キロと遠い立地のせいか、観客動員に苦しみ、2010年シーズンを最後に移転に追い込まれた。その移転先が今回消滅するデュランゴの前身球団のフランチャイズ、シウダーデルカルメンなのは皮肉なことだ。(かつてのテコスのホーム、パルケ・ラフンタ/ヌエボラレド) 新生テコスは、かつてと同様、アメリカ側でも試合を行うことを希望している。アメリカ側のラレドには、1995年にアパッチズ(テキサス・ルイジアナ・リーグ)2006年から2010年まではブロンコス(ユナテッド・リーグ)、2012年から昨シーズンまではレムールズ(アメリカン・アソシエーション)と独立リーグの球団が度々フランチャイズを置いていたが、現在は「空き家」の状況。テコスは、かつて使用していた5000人収容のベテランズ・フィールドではなく、2012年にレムーズ誘致のため新造された6000人収容のユニトレード・スタジアムを使用する予定にしている。(かつてのテコスが使用したアメリカ側のスタジアム、ベテランズ・スタジアム/ラレド)
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