本日もディアブロス対スルタネスの一戦。このカードは、かつてともに首都を本拠としていたディアブロス対タイガースと並ぶ、メキシコ野球の黄金カードであるはずなのだが、ディアブロスの不振でいまいち盛り上がりに欠けている印象だ。最寄り駅近くには露店が出ていて海賊版のグッズが売られている。21年前、初めてメキシコ野球を観た時、首都には公式グッズらしきものがあったが、地方に行くとバッタもんしかなかった。そのうち、各チームや連盟がグッズ販売に腰を入れ始め、ベースボールカードを出したこともあった。で、今はすっかりニューエラなどのアメリカ資本が入ってき、公式グッズの値段は日本と変わらなくなっている。それでもメキシコ面白いところは、バッタもんがある程度堂々と売られ、こっちも品ぞろえが良くなっているのだ。ここでもメキシコシティだけでなく、ビジターチームのグッズも売っていた。質的にも本物とさして変わらない。
(クラシックユニフォーム。これは少し高かった)に(オアハカ・ゲレーロス)(レイノサ・ブロンコス。首都とあってスタンドにはビジターチームのファンもいるのでその人用か) ちなみにユニフォームは、バッタもんが280ペソ、球場の本物が700ペソ。ただし、バッタもんでもかなり本物に近いのは同じような価格だった。というより本物を横流しした感じだった。せっかくなので、バッタもんユニを買う。 球場に着くと、セレモニーをしていた。球団のオーナーが主宰する児童基金のパーティーだった。 ディアブロスのオーナーは、レバノン系のメキシコ人富豪、アルフレッド・ハルプ・ヘル氏だ。この国最大の大銀行、バナメックスの前オーナーで、電信会社アバンテルのオーナーでもある。その野球好きはつとに有名で、ディアブロスのほか、別邸のあるオアハカのチームも事実上保有している。 このパーティーの後は、フィールドで少年野球の表彰式が行われた。15,6歳の各州選抜チーム全国大会の上位3チームがこの試合に招待されていたのだ。優勝はハリスコ州チーム。メンバーが表彰台に立つと、スタンドに陣取った父兄たちの歓声がわきおこる。日本でも高校野球や少年野球の保護者は熱狂的だが、これはどこでも同じようなものだ。この優勝チームのメンバーの関係者にどこかで見た顔があった。とくに面識はなかったのだが、私が着ていた1994年のディアブロス優勝Tシャツを見つけて向こうから声をかけてきたのだ。「俺はこの優勝メンバーだよ」 この男、ルイス・アレドンド氏は、メキシカンリーグ一筋23年で1509安打を記録した名外野手だ。前回2006年の訪問時にも優勝チームのユカタン・レオーネスのメンバーだった。この時に選手の何人かと話をしたので、私の記憶にもうっすらと残っていたのだろう。 彼の甥がハリスコチームのメンバーらしく、表彰式後、オーナーのヘル氏と3人で写真に収まっていた。(中央がオーナーのヒル氏。右がアレドンド氏) イベントの効果もあって、この日のスタンドは6割方埋まっていた。児童基金の面々は、スタンドで記念写真に収まると、そのほとんどは帰ってしまっていたが、少年野球の方は、めったに見られないプロ野球に興味津々と言った感じだった。収容人員の少ないスタンドだが、大きなスタジアムに数千人では閑散とした感じが強いので、現状ではこれくらいの方がいいように感じる。来シーズン途中に完成予定の新スタジアムはメキシコではトップクラスの2万人収容らしいが、ディアブロスにももう少し頑張ってもらわないと、せっかくのスタンドも閑古鳥が鳴いてしまうかもしれない。 試合の方は、昨夜と同じく序盤は投手戦でスタート。ここまでディアブロスは11勝5敗でチームの勝ち頭のダビッド・レイエス、スルタネスもこれまた10勝1敗、それも防御率2.94(2点台の防御率はメキシコでは珍しい)でチーム勝ち頭のエドガー・ゴンザレス。(レイエス)(ゴンザレス) 3回表にウォルター・イバラのライト線への二塁打でスルタネスが均衡を破るが、ここまでは投手戦の様相を示していた。(イバラ) しかし、4回にゴンザレスが突如乱れる。ディアブロスはこの回先頭の昨夜先制のホームランを放ったキャプテン、イバン・テラッサがファーストへ絶妙のセーフティバント。続く4番サイル・ハンカードが四球で歩くと、カリム・ガルシア(元オリックス)の右中間二塁打を含む三連続安打で逆転に成功する。この後もディアブロスの攻撃は止まらず、ゴンザレスは結局、押し出しを含めこの回5失点を喫する。これでもピッチャーを代えないところに、このリーグの投手不足が顕れている。 結局、この回の攻撃が試合を決めた形になり、両軍終盤に1点ずつを入れたものの、6対2でディアブロスが勝利し、勝率を5割に戻した。(アメリカ人助っ人、サイル・ハンカード。メキシコでは2014年からプレーしている)
↧