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Channel: 野球:海外/独立リーグ
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イ・スンヨプとチェ・テイン――サムソン打線の中核を担う2人の海外派

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2014年の韓国プロ野球はサムソンライオンズが史上初の統合4連覇(4年連続でペナントレース及び韓国シリーズ制覇)を達成して幕を閉じた。今シーズン、サムソン打線は個人タイトルの獲得がキム・サンス(金相豎)の盗塁王しかなく、「個」の部分では韓国初のシーズン200安打を達成したソ・ゴンチャン(徐建昌)や3年連続本塁打打点王のパク・ピョンホ(朴炳鎬)、長打率リーグトップのカン・ジョンホ(姜正浩)を擁した2位ネクセンヒーローズほどのインパクトを見せることはなかった。ローテーション投手5人全員が規定投球回に到達し2桁勝利をした投手陣にも言えることだが、サムソンの強みは突出した「個」以上に選手層の厚さにあったと言える。下位打線を除き満遍なく得点できる打線。それを確認出来るデータをひとつ提示してみよう。次の表は1~9番まで各打順のスタメン打者の打率、出塁率、長打率、OPSの平均である。その打順での実際の成績という訳ではなく、打順毎に各打者の打率に(スタメン試合数÷128試合)を乗じて合計したものである。この表を見て注目されるのは1番打者と6番打者のOPSの高さである。1番打者は新加入のナバーロが務めたが、これに関しては他球団の1番打者とあわせて後日扱う予定である。今回は6番打者に着目してみたい。打高投低の影響でOPSのリーグ平均が.807あるものの6番打者の平均で.871は高い数字と言うことができ、サムソン内では3番打者とほぼ同等である。それでは打順別のスタメン出場数を次の表で確認してみよう。 6番打者として先発出場した選手のみを抜粋すると次のようになる。また、故障者がいない場合のサムソンの基本オーダーは次の通りである。(成績は左から打率、HR、打点)1ナバーロ(二).308 31 98 2朴漢伊(右) .331 9 80 3蔡泰仁(一) .317 14 99 4崔炯宇(左) .356 31 100 5朴錫珉(三) .315 27 72 6李承燁(指) .308 32 101 7朴海旻(中) .297 1 31 8李知栄(捕) .278 3 32 9金相豎(遊) .288 5 63 すると昨シーズン、6番打者を主に担っていた選手は「国民打者」の異名を持つイ・スンヨプ(李承燁)であったことがわかる。開幕戦を6番打者として迎えたイ・スンヨプは負傷者で中軸の離脱が目立ったオールスター戦以降に5番打者を任される機会が多くなったものの、実にシーズンの3分の2を6番打者として出場している。昨シーズンのサムソンを読み解く鍵は「6番イ・スンヨプ」という打順にありそうである。それではここで打順別のイ・スンヨプの成績を見てみよう(3番は1試合のみなので省略)。 2014年のイ・スンヨプ打順別成績 5番 40試合 169打数 .314 14HR 36打点チーム勝率.548 6番 86試合 332打数 .310 18HR 65打点チーム勝率.663 打席数の割には5番での本塁打が多いが、それでもチームの勝率はイ・スンヨプが6番のときの方が良い。イ・スンヨプが5番に入るのはパク・ソンミン(朴錫珉)やチェ・ヒョンウ(崔炯宇)という主軸打者が欠場する場合なので勝率が下がるのは当然であるが、イ・スンヨプを6番に置いた場合の勝率の高さには驚かされる。昨シーズンのイ・スンヨプの勝利打点は17であり、NCダイノスのテームズと並んでリーグトップタイであることから、クリーンナップの後ろに控えるイ・スンヨプがランナーを返したことが勝利に繋がったという面もあるように思う。また2013年、イ・スンヨプはプロ入り後自己最低の打率.253を記録し、本塁打も13本にとどまっていたが、昨年イ・スンヨプが蘇り32本塁打を放ったのは、負担の少ない6番に打順を下げたことも影響しているのかもしれない。サムソンのチーム総得点812と総HR数161はネクセンのそれ(841、199)を下回っており、「打のチーム」としては総合力でもネクセンが上回っていたと見ることもできるが、サムソン打線の特徴は「ほぼ100打点カルテット」の存在にあった。イ・スンヨプ101打点、チェ・ヒョンウ100打点、チェ・テイン(蔡泰仁)99打点、ナバーロ98打点というように打点が分散されており、特定選手に極端な依存をすることなく得点を挙げていたことがわかる。主に1番打者のナバーロが100打点近く稼いでいるのは9番キム・サンスの機動力とリーグトップの得点圏打率(.407)を記録した本人の勝負強さがあってのことであろうが、主に6番を打った選手が101打点を記録したのもやはり珍しいことであろうと思う。韓国プロ野球ではこれまで同一チーム100打点カルテットはおろか同一チーム100打点トリオが誕生したことすらなく、昨年がいくら打高だったとはいえシーズン128試合制で100打点は難しいことである。この「6番イ・スンヨプ」という脅威的打線を組むためには、本人だけでなく他の打者の活躍も必要である。ここで昨年のサムソン打線のポイントとなったのは主に3番を任されたチェ・テインの存在であろう。チェ・テインは2013年に規定打席未到達ながらも.381の打率を記録した左の巧打者である。ところが優れた打撃センスを持ちながらも、昨年を除くと2009年の1度しか規定打席に届いておらず、怪我や不振などでシーズン通した活躍ができていない選手であった。イ・スンヨプを6番に置くことができたのは、チェ・テインをクリーンナップに固定できたことに大きな要因があったと言える。チェ・ヒョンウとパク・ソンミンは怪我さえしなければ、これまでの実績を見てもクリーンナップを任せるに十分な選手であり、チェ・テインはクリーンナップ構成の最後のピースだったのである。昨シーズン、チェ・ヒョンウはスタメン出場全試合4番、チェ・テインとパク・ソンミンはスタメン出場全試合クリーンナップであり、打順を構成するとき彼らは明らかにイ・スンヨプよりも序列が上であった。このチェ・テインという選手は左打者であること以外にも、守備位置が一塁手のみである点、そして海外野球の経験者である点が共通している。チェ・テインは2001年に高校を卒業後、ボストンレッドソックスと投手として契約するものの、怪我で投げることすらままならず帰国、社会人野球を経て2007年に野手としてサムソンに入団する。2009年と2010年に活躍し打者として才能の片鱗を見せるが、試合中に起こした脳震盪の影響もあって2011年はどん底を味わう。そこに追い打ちを掛けたのがオリックスバファローズからのイ・スンヨプ復帰であった。2004年からの8シーズンをNPBの3球団で過ごしたイ・スンヨプは全盛期を過ぎていたが、韓国球界での実績ではチェ・テインとは比べものにならなかった。チェ・テインは2012年のシーズン序盤にチャンスを与えられたものの、不振から復調できないままシーズンを終えた。状況が変わり始めたのは2013年であった。チェ・テインは打席で結果を残し続け、代打要員から相手が右投手先発時のスタメン、そしてレギュラーへと確実に地位を向上させていった。怪我でシーズン後半に長期離脱をしたものの、右投手先発時には5番打者を任されるまでになった。一方のイ・スンヨプは3番を任されるも極度の不振に苦しめられ、てこ入れで4番に座らされもしたが一向に調子は上向かず、スタメン落ちも経験した。 2013年をキャリアワーストで終えたイ・スンヨプと、同年を再浮上への期待を抱かせるシーズンとしたチェ・テインが迎えた2014年。同じ守備位置、同じ左打者の2人は生き残りを賭けた壮絶な競争にさらされるかに思えた。しかし蓋を開けてみれば両者ともに活躍し、どちらかが生き残り競争から脱落するどころか、チームに相乗効果を与えすらした。2014年のサムソン打線は海外派2人の揃い踏みに支えられていたのである。それでは今シーズン以後、この2人の海外派選手、特にイ・スンヨプの展望はどうなるのであろうか。イ・スンヨプはベテランの域に達しているが、紆余曲折の末に現在の地位を築いたチェ・テインも決して若くはない。イ・スンヨプは38歳、チェ・テインは32歳で開幕を迎える。彼らはいくら結果を残そうとも1年1年が勝負となる。現時点でサムソンは次世代の一塁手が育っていないが、有望株としてク・ジャウク(具滋昱)の名前を挙げることができる。ク・ジャウクは昨シーズンまで2年間、尚武フェニックスで軍隊に服務していたが、今シーズンからサムソンに復帰することとなる。昨年はフューチャーズ南部リーグ(2軍戦に相当)で首位打者を獲得しており、1軍でも活躍することができるかが注目される左打者である。昨シーズンは中堅手を主ポジションとするパク・ヘミンが途中出場から一塁守備に就くことがあり、スタメンでも8試合は一塁手としての出場があった。ク・ジャウクは昨年の一塁手としてのパク・ヘミンのように、途中出場でチャンスを得る形となろう。昨シーズン、イ・スンヨプは一塁手として7試合、指名打者として120試合にスタメン出場している。またチェ・テインは一塁手として113試合、指名打者として6試合にスタメン出場している。昨シーズンは、体調が万全でない選手を指名打者で使うよりはイ・スンヨプの出場が優先されており、出場試合は全てスタメン起用されるなど、打順を6番に下げながらも戦力としてはかなり重要視されていた。もしイ・スンヨプの成績が2013年のように低調であり、ク・ジャウクら若手選手が台頭してきた場合には、他の選手を指名打者に回して代打で出場する機会が増えることとなろう。順調にいけば2015年オフ、イ・スンヨプは2度目のFA資格取得を迎える予定である。2014年オフ、サムソンは先発右腕ペ・ヨンス(裵英洙)、リリーフ左腕クォン・ヒョク(権奕)の2人がFA資格を行使して他球団に移籍したが、彼らが移籍を選んだのは球団から伝えられた今後の役割に納得できなかったためだからと考えられる。ペ・ヨンスは「青き血エース」(青はサムソンのチームカラー)の異名を持ち、サムソンを象徴する選手であった。だがその彼が先発投手にこだわってハンファイーグルスに移籍をした。韓国では近年、FA選手の契約は一流選手の場合4年契約が通例となっており、ベテラン選手であっても実績がある場合は3年契約を最低ラインとするのが基本路線となっている。その結果、球団がリスクを背負い込むこととなり、今後成績が落ち込むことが予想される選手との契約に慎重になる場合がある。野手の世代交代という課題を抱えるサムソンが果たしてイ・スンヨプが納得するような条件を提示するのだろうか。 2016年もサムソンのイ・スンヨプを見ることができるのか。それはもちろん、イ・スンヨプが自らのバットでその存在価値を証明できるかにかかっているが、ク・ジャウクら若手が台頭するかどうか、そして同じ海外派であるチェ・テインの活躍如何が与える影響も大きいように思う。 2014年は結果として6番イ・スンヨプの活躍を助けることとなった3番チェ・テインの存在が、今シーズンはまた少し違った形で注目される。

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