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Channel: 野球:海外/独立リーグ
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「極端な」打高投低を数字で考えてみる

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何度も取り上げてそろそろ飽きてきた韓国プロ野球の打高投低ネタですが、数字で見て何か言えることはないかと思い、再度確認してみることにしました。というのも、今年の打高投低はこれまでの打高投低のシーズンと比べても異様に防御率が悪いので、なぜこんなに極端な数字になっているのかを考えてみてもいいかなと思いまして。まず過去20年分のデータを表に整理してみました(一部データは10年分)。打率、HR/9、BB/9、K/9のうち、特に防御率との相関関係が大きいのが打率とHR/9です。そこでHR/9、打率、そして打率と関係性の深いDER(守備効率)の推移をグラフにしてみました。今年は昨年とボールの反発係数が違う可能性があり、昨年よりも本塁打が出やすい傾向にはありますが、今年のHR/9は過去の打高投低のシーズンに比べて極端に高い訳ではなく、1999年や2009年の方が高い数値を出しています。グラフでも大体わかりますが、次の分布図でより明白な通り、防御率と相関の高いHR/9と打率のうちでも、打率の方がより高い相関にあると言えます。この分布図も過去20年分です。赤の印が今年を指しています。今年は本塁打の割には防御率が悪く、防御率が5点台にまでなっている「極端な」打高投低の原因には打率の影響が大きいようです。単純にボールの飛ぶ飛ばないの問題だけではありません。今年のリーグ打率は1999年と比べても1分6釐高くなっています。この被打率の悪化と関係しそうなのがDERの悪化です。DERはインプレーの打球をどれだけアウトにできたかを数式上で導き出すものであり、今年はここ20年でも飛び抜けて低い数字になっています。20年前とは野球の質が違うので単純比較は難しいとは思いますが、一昨年や去年と比べても大きく悪化しており、DERは「極端な」打高投低を考える上で無視できないと思います。ボールが変わって打球スピードが上がっている可能性もないではないので、DERが単純に守備能力の影響だけで上下すると考える訳にはいきませんが、変化の幅がとても大きいので守備の影響も少なからずあるのではないかと思います。 DERとの直接的関係はありませんが、今年は昨年よりもエラーも多く、シーズン時終了には昨年に比べ1チーム当たり10個程度エラーが多くなる計算です。ボールの変化、それと韓国メディアでよく言われているストライクゾーンの狭さによって打高投低になり、守備時間が増えていることによって、守備にも影響が出て打高投低に拍車が掛かっているのではないでしょうか。この他で気になるのは、QS率の悪化です。ここから先はタイトルとは異なりあまり数字を扱いません。長い回を投げてもQSを満たさない場合もあるので本当は先発投手の平均投球イニングが分かれば良いのですが、打高投低で先発が早い回に降板し、能力の劣る投手の投球イニングが増えているのかもしれません(追記:参考までに今年の全投手の1イニング平均投球数は17.70となっており過去10年で最多。去年より0.7球、近年最も打高だった2009年より0.65球多い)。去年との比較では1試合平均の起用投手数はそこまで増えていないので、勝ちパターンの継投はそこまでかわっていないのでしょうが、敗戦処理で起用されるような投手が複数イニング投げるケースが増えているかもしれません。先発がノックアウトされた際に能力の劣る選手が出てくるのは今年に限ったことではありませんが、1軍の球団数が8から9(来年は1軍10球団)に増えたことも重なって選手層が薄くなっている可能性があります。去年より打高投低が深刻になったことで、投手層の薄さがよりリーグ全体に影響したのではないでしょうか。2013年に1軍参入したばかりで選手層の薄さが想定されるNCが防御率首位なのは、チャーリー、エリックの外国人投手とイ・ジェハクの頑張りによるところが大きいです。投球イニング数チーム上位3名の合計ではNCが頭一つ抜けています。 2012年オフにはリュ・ヒョンジン、昨シーズンオフにはオ・スンファンやユン・ソンミンとリーグを代表する選手が海外に流出していますが、それだけが打高投低の大きな要因となったとは考えがたいです。少数のリーグトップクラスが及ぼす影響は限定的で、むしろ選手層の方が問題でしょう。例えばトゥサンは防御率8.41のノ・ギョンウン、ハンファは同6.00のアルバース、SKは同6.46のチェ・ビョンニョンを先発として起用せざるを得ず(数字は8月23日現在)、ノ・ギョンウンとアルバースはこの成績でも現時点の規定投球イニングを満たしています。アルバースのように外国人先発投手は成績が悪くても使われ続けるので、それもリーグの平均防御率を悪化させている原因になりますが、これも結局は韓国人先発投手の人材が足りていないためであり、選手層の問題です。つまり以上の内容を整理するとボールやストライクゾーンによって打高投低が起こり、それに守備力の低下が重なって打高投低に拍車がかかり、さらに打高投低の煽りを受けた選手起用によってリーグ全体の選手層の薄さが露呈し防御率のさらなる悪化にもつながったということになるでしょうか。来年は10球団目のKTが1軍参入の予定ですので暫く選手の供給が追いつかない状態が続く可能性があります。ただでさえ投手の人材難である状況を悪化させないためにも、投手に負担がかからないような何らかの対策(ストライクゾーンやマウンドの高さを調整して極端な打高を抑えるなど)が必要でしょう。※今回の考察はリーグ全体の傾向を考察したものであり、個別チームの成績に同様のことが言えるどうかは考察の対象外としています。☆参考:2014年のチーム投手成績

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