昨日に続いて今日は投手編になります。今年のヨーロッパ野球最大のトピックと言っていいのがリトアニア出身ドビダス・ネブラウスカス(パイレーツ)のメジャーデビュー。欧州野球の中でも強豪とは言えない野球マイナー国リトアニアからのメジャーリーガー誕生。父親がリトアニア代表の監督を務めたリトアニア野球の第一人者(wikipediaにはリトアニアで最初に野球チームを作ったという記述も)、母親はバスケの元プロ選手(リトアニアはバスケが国技)という最強の家庭環境とDNAが組み合わさって最高峰の舞台にたどり着いた、といったところでしょうか。マイナーリーガーくらいなら過去にも出たことがありますが、彼の活躍が今後母国にどう影響を与えていくかにも注視したい。MLBでもAAAでも好成績を残していますが、このAAAとメジャーにまたがって残している成績や平均で97マイルを出す剛腕リリーバーというスペック、日本のプロ野球に最近来るタイプでもありますよね。まだ24歳なのでしばらくはメジャー定着を目指してほしいですが、数年後には日本で見れる可能性も無きにしも非ず。彼を除けば、まだまだみんなメジャーへの道のりは遠い選手ばかりという印象です。ヨーロッパからMLBと契約してやってくる投手の多くは、「野球経験が浅かろうがノーコンだろうが90マイル(145キロ)をガンで計測した選手をルーキー級に放り込んで様子を見る」というイメージになります。多くの選手がそれほど登板機会も与えられず、イニング数と同じくらいの四死球を出したスタッツを残して2年くらいで帰っていきます。
MLBと契約するヨーロッパ選手は若さと素材最優先なので、欧州に戻った選手も必ずしも母国リーグで活躍したり、代表で活躍しているというわけでもありません。ドイツ出身のスヴェン・シュラーも完全にマイナーデビュー当初は完全にその類だったのですが、年を追うごとに与四球の数は減少。ルーキー級を無事卒業しています。表には1Aアドバンスドの成績しか載せていませんが、23試合に投げている1Aでは防御率1.49の好成績。BB9はデビュー当初は8.5だったのに対して1Aでは3.4と半分以下になっています。
Aアドに上がってからは打者の精度も上がって四死球はまた増えてしまっていますが、最速で95マイルを計測するなど球のボリュームは十分あるので、今後もチェックしていきたい投手の一人と言えますね。
WBCで名前を覚えた人も多いであろうオランダ代表のトム・デブロック。彼もコンスタントに140キロ後半を計測した剛腕なのですが、当時に内外にある程度の投げ分けが出来る制球力も印象的でした。ストライク取るのに四苦八苦するというレベルは裕に超えていことがスタッツにも出ています。K/BBにして5.6という高い数値は彼のコマンド力を証明しているかと思います。それほど精度の高い変化球がある印象がないので、さらに上を目指すならそこが課題になってくるでしょうか。リトアニア同様に欧州球界の中でもマイナー国であるモルドバ出身のペトル・バランとヴァディム・バランのバラン兄弟は共に今季欧州出身選手の獲得に熱心なツインズ傘下でプレー。元々は中欧・東欧の選手が集まってくるチェコリーグでプレーしていました。
15年からプレーしている兄のヴァディムはモルドバ初のプロ野球選手なのですが、兄弟ともども年齢的にも成績的にも首元が涼しい。それでも奪三振数を見るとポテンシャルは示していますが、兄貴の方はルーキーリーグでプレーする選手の年齢をとっくに超過しているのが気になる・・。オランダ代表は右のパワーリリーバーが揃っている一方で、左のリリーフ投手が駒不足。昨年のアジアWLで欧州選抜の一員だった左腕のタイラー・クレメンシアはそういう意味で期待して見ていたのですが、かなりボールのバラツキが多く不安定なピッチングを見せていました。スタッツを切る限りは今年も変わっていない。おそらく、オランダに戻っても今のままでは厳しいでしょう。ルドビコ・コベリはアレックス・マエストリ以来の国際レベルに到達したイタリア人投手になることが期待されています。2015年はU18代表とプレミア12の両方に選出されている投手。長身からコンスタントに140キロ以上を計測する球威があります。ドミニカンサマーリーグというドミニカのアカデミー上がりの選手がアメリカ本土に行く前にプレーするリーグで今季はプレーしました。本土のリーグよりもレベルは落ちるのですが、成績は上々。彼もまた制球面で不安を見せていないのが大きい。ロシア代表は代表チームは欧州選手権本大会(12チーム)に出られるか出られないかという立ち位置の国なのですが、マイナーには時折好投手を輩出しています。アンダー世代から活躍していた左腕のアントン・クズネトソフはマイナーデビューの今季ルーキー級にあたるガルフコーストリーグで防御率0.36の好成績。リーグのオールスターゲームにも選出されていました。コベリと同じ15年のU18ワールドカップメンバーであるクラウディオ・スコッティは歩幅の狭いフォームから球威のあるボールとシンカー系の組み合わせに特徴を持つ投手ですが、登板機会も少なく今後も厳しいか。オランダのマッツ・スフーテもおそらく来期はオランダでプレーすることになると思うのですが、戻ってからも厳しいと思われる。最後に独立リーグとメキシコでプレーした伊独の両エース。マーカス・ソルバッハはレベルの高いキャンアムリーグで11勝と別格。90マイル以上の球威と多彩な球種、安定した制球力を兼ね備えており、今後の国際大会も重要な試合を任せられることになりそう。オリックスを退団した昨年は韓国のハンファとBCリーグ群馬でプレーしたアレックス・マエストリはWBC後メキシカンリーグのベラクルスと契約。今年は結婚に加えてグラブのメーカーを立ち上げたという話も入ってきており、先月はイタリア代表としてオランダとのインターナショナルマッチに先発。副業しながら母国リーグでプレーする感じになるんでしょうかね。※お知らせ 来年からブログがhttp://blog.livedoor.jp/sekainoyakyu/に引越しすることになっているのでよろしくお願いします。
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