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KBOリーグと韓国代表の現位置―WBC開幕に先立って―

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 2017年に開催される第4回WBCで韓国代表の選手名鑑記事をブログに載せようかなと思っていますが、それに先立って、韓国球界の現況と選ばれた選手の構成について整理してみました。「1.リーグの現況」に関しては、普段から私のブログを見てくださっている方には繰り返しの内容となるため読むのを省略することをおすすめします。なお選手名鑑記事ですが、投手は11月時点で大枠を作っておいたので完成していますが、野手はまだ手付かずです。できれば開幕前には完成させたいところですが、間に合うかどうかちょっと微妙です。→第4回WBC韓国代表選手名鑑(投手編)1.リーグの現況 2015年にktが1軍参入をして以降、KBOリーグ(韓国プロ野球)の1軍は10球団1リーグ体制をとっています。試合数増加や本拠地球場建て替え等の影響もあって総観客動員数が伸びており、興行面で最高潮を迎えていると言って良いかと思います。 最近の韓国球界を語る上で欠かせないキーワードが「打高投低」です。2011~2013年と2014年以降とを比べると防御率や打率のリーグ平均に大きな変化を見てとることができます。 2014年に突如として打高化した背景にはボールの反発係数の変化があるのではないかと言われています。ただし仮にボールの変化がにあったとしてもそれはあくまで打高のきっかけのひとつに過ぎず、ストライクゾーン(特に上下)の狭さ、リーグ全体として球団ごとの投手層が薄くなったこと(球団数増加の影響も想定される)、あるいは投球技術に対して相対的に打撃技術が上がったことなど複合的な要因が想定されます。 近年はKBOリーグでプロキャリアを開始した韓国人選手のMLB進出が目立ちます。リーグのレベルと直結させてとらえる見方が強いように感じますが、実際にはそれ以前からレベルが上がっており、それを引っ張ってきたうち比較的若い部類に属していた選手が20代後半に差し掛かかるなどして海外進出した結果(韓国の場合は海外FAまで9シーズン、契約譲渡での海外移籍に7シーズン必要/単純な年数でなく1軍登録日数等を考慮して換算)(であったり、さらには82年生まれの2人が日本球界を経て去年MLBでプレーした結果)、それが表面化したと見る方が良い気がします。なおリーグのレベルアップを牽引してきた核心は82年生まれ世代及び85~88年生まれ世代あたりと考えられます。 2016年オフにはキム・グァンヒョン(SK)ら複数の有力投手がFA資格を取得し海外移籍を目指しましたが、彼らが国内残留したことによりFAや契約譲渡での大物投手の海外移籍はしばらく打ち止めかなという感じがします(但し特殊な契約を結んだヤン・ヒョンジョン(KIA)は来年以降の去就が不透明)。そして彼らが海外に流出しなかったことにより、リーグとしての「黄金時代」が保たれるものと考えられます。高コストの外国人選手獲得も増えていますし、投打ともに80年代後半生まれが健在なうちはレベルが落ちることは考えがたく、興行面(ただし実質的に国内完結市場)も実力面もこの良き時代はもうしばらく続くのではないでしょうか。 一方で世代交代に課題を抱えています。全体的に見たとき、20代前半の野手はそれ以前の世代に比べて長打力の部分で成長速度の鈍さが見られます。アマチュアで左打の選手が増えており、プロ入りに際して俊足巧打型が優位になっている傾向も感じられます。投手ではとりわけ先発投手の育成が遅れているように感じられます。速球型の素質ある投手が緩急を使えずリリーフに回ることが多いため、先発投手の人材が薄くなっています。各球団が外国人枠3人のうち2人を先発投手にしており(投手のみ3人、野手のみ3人は不可)、彼らに先発5人ローテーションのうち1~3番手のいずれかの役割を求めることによってローテーションを運用している状況です。 但し近年は若手選手の兵役義務を早期解決させるケースが目立っており、尚武か警察野球団の軍隊チームに所属して2年間フューチャーズリーグ(KBOリーグの2軍10球団+尚武+警察野球団)でプレーをした後に若手がブレイクすることにも期待したいです。 私たち日本人が漠然とイメージする韓国野球というのは、国際大会での印象であったり、海外移籍選手の活躍であったりに引っ張られているケースが多いと考えられます。現在はそれと国内リーグとのギャップがそこまで大きくはないと思いますが、数年先にはイメージと乖離していることも考えられ得るように感じます。2.代表の編成(→選手の簡単な成績は記事末尾) 韓国球界を取り巻く以上のような状況は代表チームの編成にも反映されています。30歳前後の脂の乗った選手が多く安定感を期待できる一方で、90年代生まれの選手は野手3人、投手1人にすぎず、フレッシュさを欠いている印象を受けます。オ・スンファン(カージナルス)、イ・デホ(ロッテ)、キム・テギュン(ハンファ)、イム・チャンヨン(KIA)のように日本とも馴染みのある選手を見つけることができますが、その名前が目立ってしまうのは若きニューヒーローの出現に飢えていることの裏返しともいえます。 投手陣のうち先発投手候補は左腕のチャン・ウォンジュン(トゥサン)、ヤン・ヒョンジョン、チャ・ウチャン(LG)、サイドスローのウ・ギュミン(サムソン)、速球派右腕のイ・デウン(警察野球団)がいます。このうちチャ・ウチャンはリリーフとして起用したいという事情があるため、残り4人が先発投手として起用される見込みです。但し基礎軍事訓練を受けたイ・デウンは調整に時間がかかっているため、1次ラウンドの3試合(プレーオフにならない場合)ではチャン・ウォンジュン、ヤン・ヒョンジョン、ウ・ギュミンの登板が有力でしょうか。 以上で名前の挙がらなかったリリーフ専任投手ではシム・チャンミン(サムソン)、ウォン・ジョンヒョン(NC)、イム・チャンヨンとサイドスロー投手が3人います。サイドスローの多い編成は非常に韓国らしいと言えますが、リリーフ右腕に速球派を揃えているところも実は注目すべき点かなと思います。サイドスロー3人に加えオ・スンファンとチャン・シファン(kt)も速い直球を持っています。イム・チャンミン(NC)が唯一、球威で抑えるタイプではないという程度です。国際大会のレベルの高いチーム相手では最低限球威は必要だという判断なのかもしれません。一方でリリーフ専任左腕のパク・ヒス(SK)とイ・ヒョンスン(トゥサン)はともに技巧派といえます。 絶対的守護神としてオ・スンファンの存在が大きいため、そこまでいかに継投するのかというのがポイントとなります。WBCは球数制限があるため、チャ・ウチャンとチャン・シファンにはロングリリーフとしての役割が期待されるとみられます。またイム・チャンミンも比較的早いイニングで出番が回ってくるでしょうか。プレミア12のときと同様に、相手打線との相性を考えてリリーフをこまめに繋いでくると考えられます。ただシーズン終了直後のプレミア12の時と異なり、今回は各投手の調子がはっきりしない3月前半開幕の大会なので、細かい継投のためには強化試合での状態の見極めが大事になってきます。 リーグとしては打高投低ですが、代表に選ばれた投手に関しては十分に戦える戦力だと思います。とりわけリリーフ陣に関してはむしろ今回の韓国代表一番の強みとも言えそうな気がします。経験面で不安のある投手もいますがそこまで大きな問題にはならないと思います。それよりもイム・チャンヨンやイ・デウンのような調整の遅れが心配です。特に先発陣は手術で辞退したキム・グァンヒョンの代替にリリーフのオ・スンファンを入れたため、枚数が当初より1枚少なくなっています。そのため、2次ラウンド、あるいはプレーオフの可能性を考えるとイ・デウンの復調は重要といえます。 野手では1・2番に出塁力の高い選手、中軸にはキム・テギュン、イ・デホ(いずれかが一塁手で一方が指名打者)、左翼手チェ・ヒョンウ(KIA)という布陣が想定されます。強打の三塁手パク・ソンミン(NC)は6番か7番で主軸が返せなかった走者を返す役割を担うものとみられます。1・2番にはミン・ビョンホン(トゥサン)、ソン・アソプ(ロッテ)、イ・ヨンギュ(ハンファ)ら外野手から2人、あるいは俊足二塁手ソ・ゴンチャン(ネクセン)あたりが候補となりますが、残った選手は6番、7番、9番のいずれかでしょうか。下位打線には正捕手の重責を担うヤン・ウィジ(トゥサン)、堅実な守備とつなぎのバッティングでの貢献が期待されるキム・ジェホ(トゥサン)あたりを配するものとみられます。ヤン・ウィジに関しては十分に中軸を任せられる打力を持ち合わせています。 今回はカン・ミノ(ロッテ)が出場辞退となったため、控え捕手には代表初招集のキム・テグン(NC)が入っています。守備に定評はありますが、打撃と走塁では代表レベルに達しておらず、捕手登録3人目の選手がいないため、起用しなくて済む展開が理想です。非常時の第3捕手としては、捕手経験のあるチェ・ヒョンウが候補となるでしょうか。 内野では二三遊を全て守れるホ・ギョンミン(トゥサン)がバックアップとして控えます。オ・ジェウォン(トゥサン)は二塁手だけでなく一塁手も可能なため、イ・デホとキム・テギュンを両方スタメン起用して一塁手として出場した方がベンチに下がった場合には、代わりに一塁の守備につくことも考えられます。今代表最年少のキム・ハソン(ネクセン)は伸び盛りのバッティングを武器にラッキーボーイ的存在になればと思います。 外野ではミン・ビョンホンの起用法が注目されます。中堅手、右翼手のいずれでもスタメン可能な右打の選手であり、控えに置いても便利な選手です。チェ・ヒョンウ、イ・ヨンギュ、ソン・アソプはそれぞれ左翼手、中堅手、右翼手の1ポジションに専念という形でしょうか。またパク・コヌは昨年外野全ポジションを守っているため、守備に不安のあるチェ・ヒョンウの守備固めとしての起用もあるかもしれません。全体的な野手の印象としては、ベストメンバーを組むことができるならそこまで大きな問題はないと感じます。但し代表辞退者が複数いたため、もしスタメン格の選手の調子が上がらず別の選手を起用する場合、ポジションによっては打力が一気に低下するおそれがあります。春先で実戦から長く遠ざかった状態から調整しているため、主力選手がどこまで状態をあげられるのかという部分が変数になりそうです。またヤン・ウィジやパク・ソンミンのように慢性的な痛みを抱えた選手だったり、イ・ヨンギュやキム・ジェホのように沖縄の代表合宿で軽い痛みを覚えた選手もいるので、そのあたりがオーダーに影響しないかという部分も不安材料ではあります。3.韓国球界の今後への期待 いくら選手生命が長くなったとはいえ、ベテラン選手にはいずれ衰えが来ます。したがって、これからあと数年程度続くであろう「黄金時代」のうちにどれだけ若手選手が実力でポジションを勝ち取っていけるのかというのがリーグの持続的発展の鍵となります。リーグを高いレベルで安定化させるためには、大きな世代的空白を作ることのない緩やかな世代移行が必要なのではないかと個人的には思っています。 今回のWBCは北京五輪以降のリーグの隆盛を築き上げてきた世代の集大成の大会といえるのではないかと思います。特に82年生まれの世代にとっては主力の立場で戦う最後のWBCになる可能性が高いです。故障のチョン・グヌと所属球団から出場許可が下りなかったチュ・シンスは参加できないことになりましたが、1次ラウンドを初めて韓国で開催するWBCでオ・スンファン、イ・デホ、キム・テギュンには地元ファンの目にその勇姿を焼き付けるような活躍を期待したいです。 今大会での世代交代は困難となりましたが、今秋開催予定のアジアプロ野球チャンピオンシップ2017、あるいは来年開催予定のジャカルタアジア競技大会では国際大会で若い世代の躍動を見ることができると思います。 若手投手では今代表に選ばれたシム・チャンミンのほかに、速球派右腕のチョ・サンウ(ネクセン)やサイドスローのハン・ヒョニ(ネクセン)がいます(但しネクセンの2人は今年がトミー・ジョン明けのシーズンとなるため今オフの大会参加は不透明)。昨年ローテーションを守った投手ではパク・セウン(ロッテ)やWBC中国代表に選出されたチュ・グォン(kt)あたりが注目でしょうか。 若手野手ではWBC代表にも選ばれた遊撃手キム・ハソンが主砲として期待されます。また今季から外野手に専念する中距離打者ク・ジャウク(サムソン)と俊足巧打の二塁手パク・ミヌ(NC)も選出が有力でしょうか。貴重な長距離砲としては、昨年15本塁打を放ったキム・ソンウク(NC)が今季所属チームで確固としたポジションを築けるかに注目です。 WBCをきっかけに韓国野球に関心をもった方には、今秋開催予定のアジアプロ野球チャンピオンシップ2017にもぜひ注目してもらいたいなと思います。

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