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韓国プロ野球の新人ドラフト指名方式(2016年ver.)

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 8月22日に韓国プロ野球では新人ドラフト(2次指名)が開催されました。KBOリーグとNPBでは方式が若干違う部分があるので、2016年現在の指名方式を整理しておきたいと思います。今年開催されたドラフトの結果に関しては後日別記事で具体的に触れておきたいと思います。→ドラフト指名結果 まず表現上の違いとして日本では2016年に開催され2017年デビューの選手を指名するドラフトのことを2016年新人選手選択会議と言いますが、韓国では同じものを2017年新人指名と呼ぶので、留意が必要です。 それでは以下で指名方式を具体的にみていきましょう。「1次指名」「2次指名」「育成選手」「新人選手の待遇」の項目に分けて説明しています。球団数拡張にともない昨年開催のドラフト(2016年新人指名)までは創設2年目以内の新生球団に対する優遇措置がありましたが、10球団目のktが今年創設3年目(1軍参入は2年目)になったため優遇措置はなくなりました。新生球団に対する優遇措置に関しては後ろの補足説明に回します。○1次指名 韓国のドラフトでは「1次指名」と「2次指名」があります。1次指名はNPBやMLBにはない独特な方式で、各球団がそれぞれに設定された縁故地域から優先的に1人ずつ指名できる制度であり、縁故地域の高校を卒業した卒業年度の大学生、もしくは縁故地域の高校に在学中の卒業年度の高校生が対象になります。これにより地元のスター選手誕生を期待することができます。ソウル3球団(LG・トゥサン・ネクセン)はソウル及びチェジュの高校を3球団で共同縁故地域としており、その3球団の中で毎年指名順をローテーションさせています。 但し高校生は高校進学後から最初に指名対象となるまでに留年した場合、1次指名の対象となりません(同一年度に同じ縁故地で複数の有力選手が現れた場合に一方を留年させて2年かけて両方指名しようとする事態を防ぐため)。また他球団の縁故地域から転入してきた場合も対象にはなりません。現在は最初に大韓野球協会に選手登録された縁故地域が基準となっているため、中学校で選手登録後に他球団縁故地域から転入、あるいは高校進学時や高校在学中に他球団縁故地から転入した場合は対象から外れます。その他、高校卒業年度にドラフトで指名を受けたが進学した大学生や、KBOリーグを経ずに海外球団に入団した選手が韓国にUターンしてドラフトに参加する場合も1次指名の対象にはなりません。 1次指名は2009年新人指名の後、しばらく廃止されていましたが、2014年新人指名から復活しています。 韓国では日本と異なりプロの球団が縁故地域のアマに積極的に支援することが可能です。そのため1次指名はプロ球団による地元アマへの積極的投資が期待できるという利点があります。日本に比べ野球部をもつ高校が圧倒的に少ないため(韓国全体で大韓野球協会登録の野球部は現在69校)比較的満遍なく支援が行き届くため可能なのかもしれません。 一方で地域間格差が反映されてしまうという問題もあります。ソウルは確かに3球団の共同縁故地域なので1球団平均の高校数にすると他の地域とかわりませんが、ソウルに安定して有力選手が集まりやすい傾向があるので、他球団に比べて選択の幅が広いように思います。もっとも今回は例年に比べソウル圏に1次指名級の選手が多くなかった印象です。 戦力均衡の面からは問題がないとは言えませんが、地元出身のスター選手を輩出しやすくするという部分では評価できる制度と言えます。 1次指名では大卒よりも高卒、野手よりも投手が好まれる傾向があります。今年6月27日に発表された2017年1次指名は10球団中9球団が高卒、また同じく10球団中9球団が投手を指名しました。○2次指名 例年8月の後半に新人指名会議が開催されます。すでに1次指名で指名された選手は対象とならず、2次指名と呼ばれます(戦力再分配のための「2次ドラフト」とは別物)。卒業年度の高校生と大学生は自動的に指名対象となり、それ以外の場合(韓国のアマから直接海外プロ球団に入団した後にKBOリーグでのプレーを目指す者や海外アマ出身の韓国人などのいわゆる「海外派」や「国外派」と呼ばれる選手たちなど)は申請をした後に2次指名に先立って行われる合同トライアウトに参加することが求められます。 韓国のアマから直接海外プロ球団と契約した場合には、海外プロ球団退団から2年間は国内球団と契約をできないという罰則があるため、契約を結ぶまでに罰則期間が終わらない見込みの選手はドラフトに参加することはできません。 指名順は前年度の順位を基準にしたウェーバー方式で下位チームから上位チームの順で指名していきます。2016年新人指名までは10位→9位→8位…2位→1位→1位→2位…というように奇数ラウンドは下位から指名、偶数ラウンドは上位から指名という形式をとっていましたが、今年開催の2017年新人指名からは奇数ラウンド偶数ラウンドに関係なく下位チームから指名するよう変更されました。 各チーム10巡目まで指名できるため1次指名を含めると1チームあたり最大11人の新人をドラフトで確保することとなります。近年は3軍相当の組織をもつ球団が多く、選手を確保するために10巡目まで全て指名するケースが大部分となっています。 KBOリーグではNPBの現行制度のような育成ドラフトはなくドラフト2次指名の対象となったが指名がなかった選手とは自由に育成契約を結ぶことができます(但し高卒育成選手には新規契約人数の制限あり)。 大卒よりも高卒の指名が多く、特に上位指名はその傾向が強く出ています。また野手よりも投手の方が上位指名されやすい傾向も見られます。一方で確率だけでいくと投手の上位指名に比べ野手の上位指名は比較的戦力になりやすい傾向があるようにも感じられ、KIAのように野手を比較的上位指名して自前育成、投手のうち先発ローテーションの主軸は大金を掛けて高性能が期待できる外国人を獲得するという手段もあります(今回のドラフトでは結果的に1次指名と2次1~2巡目が投手になりましたが)。有力なFA選手獲得にかかる費用が高騰しており、外部FA獲得では補償選手も出さなければならないため、自前野手と外国人先発投手というのもひとつの戦略としてありだと思います。 大卒よりも高卒が重宝されることに関しては、年齢を考慮すると大卒には高卒よりも即戦力としての活躍を期待しなければならないにもかかわらず、見合うだけのパフォーマンスを出すことのできる選手はあまり多くないことが影響しているのではないかと思います。また近年は有望株の早期入隊傾向が強まっているなかで大卒時の年齢で2シーズン分兵役義務が残っているのも悩み所となっているのかもしれません。 高卒での指名が多くなると大学進学上位者のレベルが下がってしまう恐れもあり、球団数が増えたことから大学進学者の入学時の技量低下も心配されます。従って高卒重視の方針は今後もしばらくは変化しないものと考えられます。 高卒選手の獲得では将来性に対する評価が相対的に高くなるため、体格条件が重視されやすいように感じます。また日本に比べると意図的に留年する選手が多い印象を受けます。手術を受けた場合、あるいは野手転向や投手転向をしたりする場合、それ以外にも身長を伸ばしてから体格を作るため、卒業を1年ずらすという場合もあるようです。この他、近年入団した世代では、早生まれ(韓国では1~2月生まれ)の選手が小学校入学時点で1つ下の学年に入学している事例も見受けられる気がします(なお現在の小中学生の世代は1月1日の年齢を基準に入学年度が決まるので早生まれの概念がなくなっています)。○育成選手 新人の育成選手には大きく分けて2種類があります。ひとつはドラフトで指名されなかったがその後各球団と契約を交わした本来の意味での育成選手、もうひとつはドラフトで指名されたが正式選手(NPBで言うところの支配下登録選手)の65人枠に入らなかった実質的な育成選手のことです。 前者に関してはドラフトに比べて大卒の選手の比率が高くなっています。新たに契約する高卒育成選手には人数の上限が決められており(ドラフト指名した選手を65人枠に入れず実質的な育成選手にするケースが多いので形骸化しつつある)、大卒は高卒より早い時期に育成契約することができることが影響していると見られます。 ただしドラフト外で獲得する育成選手は今後減少するかもしれません。すでに10球団合計で約250人の育成選手がいるため、これ以上増やすと球団によっては2軍施設などが定員オーバーする可能性があります。また球団数増加に伴いドラフトで指名される選手が増えたため、ドラフト外で獲得できる育成選手の質が落ちてきていることにも原因があります。実際にLGとSKは昨オフ、ドラフト外での新人育成選手を1人も獲得しませんでした。この流れは他球団に広がっていくかもしれません。 ドラフトで指名された選手の内、半数近くが正式選手枠に入れず事実上の育成選手になるということもあります。2次指名で大部分の球団が最終10巡目まで指名するのもこれが可能であるからです。育成選手は1軍の試合に出場できませんが、毎年5月1日以降正式選手に登録することが可能であり、正式選手になれば1軍の試合に出場できるようになります。 新人の育成選手以外にも他球団の戦力外を育成選手として獲得したり、既存の正式選手をシーズン後に形式的に放出して65人枠外の育成選手として再契約(育成転換)したりするケースもあります。今年からは保留選手名簿から除外した選手は元の所属球団と1年間、正式選手・育成選手を問わず再契約することができなくなるので、育成転換は消滅する可能性もありますが、何らかの抜け道が用いられるかもしれず何とも言えません。○新人選手の待遇 過去に海外のプロ球団と契約したことがある選手はドラフトで指名されて入団しても契約金を得ることはできません。また年俸は最低年俸(現在は2700万ウォン)からスタートとなります。 その他の選手は契約金を受け取ることに制限はなく年俸の上限も決められていませんが、年俸に関しては慣習的に、初年度年俸は全員最低年俸(現在は2700万ウォン)からスタートします。そのため最初の方は活躍しても年俸上昇率に対して年俸上昇額が低くなってしまいます。1軍最低年俸は5000万ウォンなので、1軍に選手登録された場合は登録された日数に応じて日割りで差額分が支給されます。 以前は年俸1億ウォンあればレギュラークラスという時期もありましたが、今年を基準とすると1億ウォンプレイヤーは10球団で150人(外国人選手を除く)程度おり、現在はもう少しレギュラー級の選手の年俸が上がっている印象です。年俸100位だと1億7000万ウォン程度になっています。またFA資格を取得して行使した選手は契約金を受け取ることができるため、FAで契約したトップ選手と若手選手の実質的な年俸格差は以前より大きくなっています。 近年の契約金は1次指名の選手が1億5000万ウォンから3億ウォンの間くらいが多く、昨年の最高額はイ・ヨンハ(トゥサン)の3億5000万ウォン、一昨年の最高額はチェ・ウォンテ(ネクセン)の3億5000万ウォンというように高い場合は3億ウォンより多くの額になることもあります。なお今年現時点ではロッテ1次指名のユン・ソンビンの契約金が4億5000万ウォンと発表されています。2次指名の選手の契約金は1巡目が1億5000万ウォン前後、2巡目が1億ウォン前後といったところでしょうか。中位から下位は数千万ウォン程度だと思います。 ドラフト指名されなかった育成選手に関しては、最低年俸は定められていませんが、基本的にはドラフト指名選手の最低年俸と同じ2700万ウォンとされるケースが多いようです。但し契約金は支給されないのが大部分のようです。○補足説明:新生球団への優遇措置(2017年新人指名にはなし)以下は10球団目として参入したktの事例です。・創立後最初のドラフト 各球団の1次指名に先立ち縁故地域に関係なく新生球団特別優先指名(2人) その代わりに2次指名は優勝球団の次に指名(奇数ラウンドの指名順が最後) 2次指名で1巡目終了後、2巡目に入る前に特別指名(5人)・創立後2度目のドラフト 各球団の1次指名に先立ち縁故地域に関係なく新生球団特別優先指名(2人) その代わりに2次指名は優勝球団の次に指名(奇数ラウンドの指名順が最後) 2次指名で1巡目終了後、2巡目に入る前に特別指名(3人)・創立後3度目のドラフト 1軍参加初年度なので前年の1軍順位がないため、2次指名で最初に指名可能なおこれ以外に1次指名についても、NCとktは2014年~2016年新人指名で縁故地域に関係なく1次指名をすることができました(ただし8球団が1次指名をした後)。今年開催された2017年新人指名からは縁故地域からの指名になりました。

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