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韓国球界のいわゆる「打高投低」雑感

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 ブログで何度か取り上げた韓国球界の打高投低ネタですが、2016年になっても収まる兆しを見せません。今年からは「単一公認球」(いわゆる「統一球」)を使用していますが、この目的はあくまでも試合球の平準化であって、打高投低抑制を目的としている訳ではありません。反発係数は基準値の中間を目安として調整していると考えられ、去年の全メーカーの平均とあまり変わっていません。これまで何度か見てきましたものの、極端な打高投低に突入して3年目の今年になっても、正確な理由は不明と言わざるを得ません。但し以下のことが関係している可能性があるのかなと思います。①ストライクゾーンが狭い →おそらく主要因②リーグ内のおけるボールの反発係数の変化 →2014年以降に打高投低が極端になった原因の1つか③打高投低が投手運用に影響を及ぼし更なる打高投低化 →実力が相対的に劣る投手を多くつぎ込まざるを得なくなったため④守備の影響 →ボールの反発係数が変化して打球速度が上がった上に打高投低により守備時間が長くなったことで集中力低下⑤打撃技術の向上 →以前に比べBABIP(インプレイ打球打率)のリーグ平均が高くなったことを選手の技量向上の結果とみる見解もある⑥打者に対する投手の技量の相対的な低さ →上位層というよりリーグ拡張や若手の伸び悩みによる中位層以下の相対的な技量低下であり③とも関係する、但し一部を除き外国人投手も圧倒的成績を残しているわけでもないのでこれだけが理由ではない これらどれかひとつが理由というのではなく、複合的に起こったことによって「極端な」打高投低を招いたものと考えられます。ちなみに近年の韓国球界の打高投低の特徴は「高打率」にあるのかなという印象を受けます。確かに2014年以降は2011~2013年に比べて本塁打も出やすくなっていますが、リーグ防御率5点台になった2014年よりもHR/9(9イニング当たりの本塁打)が高いシーズンは以前にも存在します(時期による球場の大きさの違いも影響しているかもしれませんが)。 なお、フューチャーズリーグ(2軍+尚武+警察野球団)では1軍以上に打高投低化が進んでいますが、これは各球団の育成選手保有増加に伴い、フューチャーズリーグ出場選手間の実力差が大きくなり、それがとりわけ投手力や守備力に負の影響を及ぼしたからなのかなと考えています(根拠はなし)。 このような打高投低ですが、KBOリーグ所属選手が海外球団に移籍することによって注目が高まっている印象を受けます。しかし「打高投低」という言葉が一人歩きしているようにも感じられ何か違和感を覚えることがあります。そこでその違和感とその他の感想を整理してみようかなと思い立ちました。1.「打高投低」はリーグ内の相対的なものである 統一球の導入以降、NPBで投高打低化が進んだこともあってか、ここ最近打高投低が進んでいるKBOリーグが引き合いに出されることがあります。ただ「打高投低」はあくまでも「そのリーグ内において打撃力を中心とする攻撃が投手力を始めとする守備と比べ相対的に優位にある状況」であるので、単純にリーグ防御率やリーグ打率、リーグ本塁打数だけをもってリーグ間の実力を比較するのはできないということを忘れてはいけません。 リーグ防御率の数字が悪いAというリーグよりリーグ防御率の数字が悪いBというリーグの投手のレベルが劣っていることはそれだけで証明することはできませんし、リーグ打率の高いAというリーグよりリーグ打率の低いBというリーグが打撃で優っている保証もありません。たとえ実際にそうであったとしても、それが打高投低であることと関係するのかはわからず、もっと他に大きな理由があるのかもしれません。こういったものはリーグの打高投低そのもので判断するのではなく、他の要素と合わせて判断すべきではないかと感じます。 加えて言うと「ボールが飛ぶようになった」というのも、あくまでリーグ内基準で考えた方が無難かなと思います。 パク・トンヒ記者は日本がミズノ社の統一球を導入した当初、同じ中国で生産していた韓国の各メーカーのKBOリーグ公認球(外国産の公認球を認めていない時期もあったが、原産地を消して国内産に偽装し実際は中国産だということもあった)もその規格変更の影響を受けてしまった可能性を示唆しています。その結果飛びにくくなっていた球が2014年からは規格を変更し飛ぶようになったのではという話です。HR/9の推移を見る限りでは2011年に一度小さくなった反発係数が2014年に大きくなったという可能性は十分にあるのかなと思います。 ただしこれが他の国の公認球と比べてどうかというのは慎重になる必要があると思います。韓国は日本とほぼ同様の手法で反発係数を検査していますが、韓国ではミズノ社の統一球の反発係数検査結果が日本での検査結果よりも大きくなった(そして検査当時=韓国の公認球も飛ばなかった時期には、ミズノ社統一球よりも反発係数の小さい韓国メーカーの公認球もあった)という事例もあるため、検査方法の微妙な違い(検査前の保管環境、実測値なのか推定値なのか等)で数字が変わってしまうことも想定され、異なった環境下での検査結果の比較はあくまでも参考程度(たとえ検査方法がほぼ同じであったとしても)と思っておいた方が良いのかなと思いました。ある程度の傾向はわかるとは思いますが、数値のみで判断するのは難しいということです。参考①:韓国プロ野球公認球検査結果整理(~2016年5月)参考②:日韓プロ野球公認球の反発係数検査方法を比較する参考③:韓国プロ野球統一球導入問題2.「打高投低」が打者を育てることに繋がるとは安易に決めつけられない 韓国人打者=スラッガータイプの印象が定着しているので、それとKBOリーグの打高投低の関係性が気になる方もいるのではないかと思います。とりわけ統一球採用後のNPBとの比較でそのように考えられるケースが多いのではないかと思います。 但し気をつけなければならないのは、2013年くらいまではKBOリーグとNPBでリーグHR/9の年度別推移が似ているということです。むしろ2008年くらいまではNPBの方が高いくらいでした。2011~2013年はKBOリーグでもHR/9が比較的低くなっており、大きく違いが出たのは2014年以降です(但しKBOリーグとNPBの比較において防御率と打率はHR/9に比してKBOリーグが高くなる傾向にある。あるいはそのあたりに近年のKBOリーグの打高投低の原因を考えるヒントがあるかもしれない/記事末尾のグラフ参照)。 投打のバランスが大きく変わったのが近年であるならば、それ以前から頭角を現していた今の20代後半~30歳くらいの選手の成長過程にどれだけの影響を与えたのかは不明です。2011~2013年は今に比べ本塁打が出にくい傾向にありましたが、このうち2012年と2013年の両方でシーズン本塁打20本以上を放ったのは3人しかおらず、そのうちの2人はMLBに移籍したカン・ジョンホとパク・ピョンホでした(もう1人はチェ・ジョン/パク・ピョンホは2年とも30本塁打以上)。むしろ本塁打の出にくい年でも量産できた選手こそが長打力の際立っている選手だとも言えなくもないのかなと思います。 もし最近の打高投低が選手の成長過程に影響を及ぼすのであれば、それは今の20代後半から30歳前後の選手よりも20代前半の選手に対してだと考えられます。ところが今の20代前半の選手はその上の年代の選手よりも成長速度が緩やかになっており、特に長打力の部分で上の世代が同じ年齢だった頃より全体的に劣っています(とりわけ1991~1994年生まれ)。 無論、影響が全くないとは言い切れません。長打が出やすい傾向にあるならそれを活かしたバッティングスタイルになりやすいという可能性はありますし、若手投手を先発投手として育てるのであれば、今の極端な打高状態ではかなりの我慢が求められます。 しかし打高投低が選手成長の決定的な要因となるかといえばそうとも限りません。例えば高校で金属バットの代わりに木製バットが使用されるようになった結果、若手野手の伸び悩みや若手投手のプロ適応にかかるまでの時間が増加したとの見解もあります(アマチュアで投高打低化が進んだ結果、打者は俊足巧打型が増え、速球派投手は単調な投球になりがちとなるため)。この見解によれば木製バット採用が選手の成長過程に影響を与えたことになります。 勿論木製バット採用も、近年の選手成長過程に及ぼした影響がどの程度のものなのかは不明ではありますが、打高投低のみを選手育成と安易に結びつけるのはどうなのかなと感じるところであります。リーグの打高投低が仮に打撃力向上に結びつくとすれば、それが具体的に現れてくるのは今後もう少し見守ってからでないかと思います。参考④:韓国プロ野球1990年代生まれ問題?(野手編)参考⑤:韓国球界の若手選手の成長と世代間ギャップをちょっとゆるく考えてみる参考⑥:韓国プロ野球1990年代生まれ問題(投手編) 以上、大きく分けてふたつの違和感に関して述べてきました。「打高投低」というものがわかりやすい特徴となっているため(特に日本球界との比較で)、今の韓国球界で目立っている部分が「打高投低」と結びつけられやすい傾向にあると考えられますが、「打高投低」は最近とりわけ顕著になった現象であるため、現段階で検証するのは難しいという印象を受けます。現在の事象の理由はまた別に検討する必要性、そして「現在」や「過去」からイメージされる通りに「今後」が推移していくのかという疑問。繰り返しになりますが、考えれば考えるほど結論は簡単にはでないだろうなと思います。<参考 NPB及びKBOリーグのリーグ平均比較>備考:6月26日試合終了時点のKBOリーグ、セ・リーグ、パ・リーグのリーグ平均 KBOリーグ防御率 5.01 HR/9 1.01 打率 .285 長打率 .430 セ・リーグ 防御率 3.79 HR/9 0.80 打率 .253 長打率 .373 パ・リーグ 防御率 3.71 HR/9 0.74 打率 .260 長打率 .380

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