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韓国プロ野球1990年代生まれ問題(投手編)

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 韓国球界では近年、若手先発投手の育成が進んでいないことが問題として取り沙汰されることがある。リュ・ヒョンジン、キム・グァンヒョン、ユン・ソンミンといった、高卒後早くから活躍しエースとして扱われてきた投手たち、あるいはここ2年で安定感を身につけ球界を代表する左腕となったヤン・ヒョンジョンは皆1980年代後半生まれである。一方で1990年以降に生まれた投手でこれまで1シーズンでも規定投球回に到達したことがある投手は5人しかいない。 無論、その理由の1つとしてリーグの成長という肯定的要因を挙げることができる。全体的レベルの向上によって入団直後の新人選手たちがすぐに活躍することが難しくなっており、以前に比べ2軍でじっくり経験を積ませ、プロへの適応に時間を掛けるようになっているものとみられる。 この他に有望株を積極的に早期入隊させる球団が増加したことも影響していると考えられる。特にフューチャーズリーグでプレーすることが可能な尚武や警察野球団で兵役義務を果たす場合には技量向上を見込んでいることが多く、早い段階でそういった形をとるケースでは服務を終え帰ってきてから本格的に1軍に投入することもある。 以上の2つの理由が重なった結果、1軍での本格的なデビューが全体としてやや遅くなっている可能性は十分に考えられる。但しそれ以外の要因も検討してみる必要はあろう。後掲表①(記事の末尾)は90年以降生まれの選手が2015年までにシーズン100投球回以上、あるいは規定投球回以上を達成した事例(先発登板5未満の投手は除く、以下の事例でも同様)である。またこれを5年ずらして後掲表②(記事の末尾)に80年代後半(85~89年)生まれの選手の事例も整理してみた。 100投球回以上が前者の20件に対し後者は38件、規定投球回以上は前者6件に後者22件となっている。そして100投球回を1度でも達成したことのある選手は前者16選手に対して後者17選手とさほど変わらない一方、規定投球回を1度でも達成したことのある選手が前者5選手に対して後者10選手と以前に比べ半減している。90年代生まれで規定投球回を複数回達成したことがあるのはイ・ジェハクのみであり、以前に比べて複数年安定して先発ローテーションに定着した投手が少ないと言える。 もっとも後掲表では90年生まれや85年生まれの選手の実績が反映されやすい一方で94~96年生まれや89年生まれの選手は対象となるシーズンが少ないため数字として反映されにくい。そこで「満25歳以下(12月31日時点での年齢)」という条件に変えて2000年以降の100投球回以上、規定投球回以上達成者の年度別推移を次のようにグラフにしてみた。この条件では例えば2015年の場合は90年生まれの選手が上限となっている。 グラフを見ると2012年に急激に下降しており、近年若手先発投手が育っていないというのは数字の上でも確認できよう。シーズンをまたいで先発ローテーションに定着できる若手投手が減少していることの影響がこのグラフからも読み取れよう。 こういった変化の原因として、リーグレベルの向上、新人育成や入隊管理の方針転換が考えられると先に述べたが、100投球回達成の若手が2012年に急激に落ち込んだことは気にかかる。 原因として考えられるのは先発ローテーションの外国人依存が強まっていることである。厳密には外国人先発登板数や外国人投球回の推移を見るべきかもしれないが、ひとまず外国人の規定投球回到達者を次のグラフで見ると、2012年に初めて10人を超えている。 グラフや表では示していないが、昨年は外国人先発登板は548であり全体の38%を占め、投球回に関しても全体の約1/4を外国人が消化している。 但し若手投手の質の変化も否定することはできない。26歳以上の規定投球回到達者は2012~14年に関してはむしろその直前の時期よりも多くなっている。投球回だけでなく先発投手の防御率を比べても、80年代後半生まれに比べ90年代生まれは物足りなさがあり、世代による違いはやはり考慮すべきであろう。 とはいえ、ここまで挙げてこなかったが、90年代生まれにはリリーフとして活躍していたり、あるいは素質を見込まれ重用されていたりする投手は少なくない。だが彼らの多くは良い直球を持ちながらも変化球はほぼスライダーのみというようなシンプルなパワーピッチャーであり、短いイニングにこそ持ち味を発揮できるタイプと言える。 2004年8月に高校野球で木製バットが採用されると、高校野球の投高打低化が起こり、高校球界に少しずつ変化が生じるようになった。打では全体的長打力不足のためコンタクトに重点が置かれる傾向が強くなり始め、投では力押しできる投手がずば抜けた成績を残すようになった。高校入学時から木製バットを使用するようになった世代は89年生まれ以降ということになり、木製バット採用による影響が色濃く出始めたのもそのあたりからであろう。 アマチュアではシンプルな力押しの投球が通用しても、身体のできあがっているプロでは同じようには行かない。結果として、長いイニングを任せられる適性を持った若手投手が少なくなったのかもしれない。 先発ローテーションの外国人投手依存が高まった結果として若手投手の先発登板機会が減少したのか、先発ローテーションに定着できる若手投手の減少が外国人投手依存に繋がったのかの議論は、いわば鶏が先か卵が先かを論じるようなものである。おそらくどちらの要因もあり、そのどちらの比重が大きいのかはここでは大きな問題とはならない。いずれにせよ、若手投手の奮起が求められる。 2014年に1枠拡大された外国人選手所有枠3(3人全員を投手もしくは野手の一方のみにすることは不可/新生球団は1軍参入後2年間に限り+1枠)は、そのうち2枠を投手に充てるのが基本となっており、同じ試合には3人中2人までしか出場させられないルールによりリリーフ投手としての獲得が困難なことから、今後も外国人先発投手の躍進は続くことになろう。外国人選手獲得に積極的投資をする球団も現れており、レベルの高い助っ人がリーグに大きな影響を及ぼすものとみられる。 しかし昨年は規定投球回未到達ながら100投球回を超えた25歳以下の投手が8人おり、10球団体制による試合数増加で若手投手にも機会が回ってきやすくなった側面をうかがうこともできる。 今季NCでは90年生まれイ・ジェハクと93年生まれイ・テヤンが外国人2人に続く先発ローテーションを任されるものとみられ、93年生まれのイ・ミノも先発5番手の座を狙う。 ロッテでは尚武から復帰するコ・ウォンジュン、あるいは昨季途中にktから移籍してきた95年生まれのパク・セウンが先発4番手や5番手をうかがう。またネクセンではリリーフで実績を上げた94年生まれのチョ・サンウを先発に転向させることが決まっており、補職変更後も引き続き活躍することが期待される。 この世代の投手が先発投手として今後活躍できるかどうかの鍵は緩急の使い方であろう。90年生まれ以降で唯一複数回の規定投球回到達を達成しているイ・ジェハクがほとんど直球とチェンジアップしか投げないにもかかわらず、先発投手としての役割を果たしてこられたのは、緩急の使い方が上手だからであろう。 チョ・サンウはこの春季キャンプで、直球とスライダーに続く武器として活用できるようチェンジアップとカーブを磨いており、どのような成果が出るのか注目される。若手投手のツーピッチからの脱却成功例となることを期待している。<後掲表①><後掲表②>

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