MLBは現在、国外にルーキークラスのマイナーリーグを2つ展開している。ドミニカン・サマーリーグとベネズエラン・サマーリーグがそれだ。各球団は両国においてアカデミーを運営し、ここで晴れて契約選手となった若者は、これらのリーグを登竜門としてメジャーへの階段を上がっていく。国内各地にアカデミーが点在していたドミニカでは近年、スカウトの便を考えて、空港近くにアカデミーが集中するようになり、サマーリーグのチームを2つ持つ球団も現れるようになったのに対して、ベネズエラン・サマーリーグからは撤退する球団が続出していた。撤退した球団は、自球団でスカウトした選手を言語文化的に類似性のあるドミニカで育成するようになったのだ。昨シーズンで言えば、ドミニカン・サマーリーグの登録選手の4分の1強、ドミニカ国外の選手の8割弱がベネズエラ出身者で占められていた。中には、地元ドミニカ人よりベネズエラ人の方が多いチームもあったくらいだ。それに比べ、ベネズエラン・サマーリーグの方は、最大12あったチームが昨シーズンは4にまで減っていた。このうちカブスが今シーズンの不参加を決めたため、3チームでのリーグ戦続行は不可能とみて休止という判断に至ったようだ。1997年に都市名を冠した6チームで始まったこのリーグは、2001、2002年には12チームにまで拡大、2004年からはドミニカと同じように、親チームの名前をそのまま使う(つまりユニフォームはお古で済む)ようになり、選手不足の際は混成チームで参加するなど様々な工夫を行っていたが、2000年代半ばからチーム数が減るようになり、19年の歴史にいったんピリオドを打つことになった。その背景としては、前政権下における経済混乱と、それにともなう物資不足があるようだ。 メジャー球団にしても、近年はフロリダのルーキー級・ガルフコーストリーグに2チームもつ球団が現れたり、また世界各国できた新興リーグにスカウト網を広げ低い競技レベルの選手を育成する場は増えてきているので、リスクを冒してまでベネズエラに固執する必要もなくなってきたのだろう。ただ、ベネズエラが有望な選手貯水池であることは今後も変わりなく、このリーグに参加していた球団にとっては、ここでスカウトした選手を今後どうするのかが、課題になりそうだ。ドミニカに送ろうにも、選手枠、あるいは寮のキャパシティの関係で、受入数にも限界がある。このニュースを報じた米野球誌『ベースボール・アメリカ』は、施設が充実し、宿舎にも余裕のあるフロリダで育成することになるのではとコメントしている。個人的には、今年こそ訪問しようと思っていたリーグだけに、非常に残念ではある。
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