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Channel: 野球:海外/独立リーグ
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子孫繁栄祈願

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カリブ海にあるオランダ領アンティル諸島出身の選手がチームの中心を担っているオランダがWBCで快進撃を見せたとき、欧州勢ながらこの強さを見せるの秘密としてこのような注釈を付けられることが多かった。確かに、オランダが韓国を倒せるくらいの強さを持っているとイメージできた野球ファンなんて決して多数派ではなかっただけに、この説明は分かりやすく、そして手短に理解してもらいやすい。本土出身でも貢献してる選手はいるんだよ、と反論したくなった人も多いでしょうが、実際これは事実だしなんかわざわざクレーム付けるのも野暮な気がした。ただ、ちょっとふと考えた。そもそも、「ああカリブの選手が多いから強いのね」とナチュラルに受け止めてしまいがちだけど、オランダ領アンティル諸島自体、元から伝統的に野球のタレントを輩出し続けてきた国だったっけ?、と今でこそプロファーだのシモンズだのヤンセンだのメジャーで活躍中の選手や将来的にメジャーでの活躍が期待される選手がゴロゴロいるご時世になったものの、何年か前くらいまでメジャーに定着出来てた選手なんてアンドリュー・ジョーンズくらいしかいなかったじゃねえか、なんて思うと、カリブ海の島国とはいえ、オランダ領アンティルだって野球の新興地域じゃねえか!!とちょっと大事な部分を見落としかけてたことに気付く。オランダ領アンティル諸島ベネズエラの北西沖にある5つの島で構成さていたオランダ自治領で、厳密に言えばアンティル諸島、という自治領の括りは今は解体されている。現在はそれぞれの島が自治領として独立していて、野球の場合はアンティル諸島のタレントのほとんどがキュラソー島出身。野球におけるアンティル諸島でイメージされるものは、ほとんどキュラソーと言い換えて差し支えないかもしれない。このたった14万人しかいない小さな島が、世界屈指のタレント輩出国に変わっていったきっかけとなる存在はは二十四年前に誕生した「元祖」キュラソー出身メジャーリーガーとなったヘンスリー・ミューレンス。 MLBではヤンキースでプレーし、その後は日本球界でもヤクルトやロッテで活躍した。彼がキュラソーのメジャーへの扉を開いたパイオニアと位置付けるのなら、現在楽天でプレーするアンドリュー・ジョーンズはその息子といったところでしょうか。ここでわざわざ彼のメジャーでのキャリアを説明することさえおっくうに思えるスーパースターのジョーンズは、説明するまでもなくキュラソー島の国民的?いや島民的英雄か。たぶんだけど、日本におけるイチローとも比較にならないんじゃないかと思われ。その偉大すぎるメジャーリーガーの影響を受けた世代が、現在MLBに台頭し始めている若手のキュラソー出身メジャーリーガーで、近年の国際大会のオランダ代表の強さを支えている世代でもある。ミューレンス監督とジョーンズによってまとめられたこのオランダ代表はキュラソー勢に限定して言えばその三世代混合のチームであり、キュラソー野球の歴史を体現していたチームなのかもしれない。そんなチームが歴史的な快進撃を見せたことは、今にして思うと感慨深い。似たようなことが起こっていたチームは他にも思い当たる節がある。アテネ五輪におけるオーストラリア代表とか。オーストラリア人メジャーリーガーのパイオニアと言えば中日でもプレーしたデーブ・ニルソン。戦前の選手だったり、豪州生まれ米国育ちのメジャーリーガーは過去にはいたようなのですが、実質的にはニルソンがパイオニアと呼べる存在と言っていいかと。 MLBオールスターにも出場した彼がきっかけでMLBや傘下のマイナーリーグでプレーする選手も今では珍しい存在ではなくなり、ニルソンとニルソンに続いていった選手たちによって構成されたアテネ五輪では準優勝という大きな結果を手にしました。まあタレントの割にオーストラリアにおける野球の位置づけに大きな変化がないのは、国内のプロリーグがなかなか定着しなかったことやラグビーを始め他のスポーツ文化が既に存在していたことが大きい。その点は新しく発足したABLに期待したいところでしょうか。楽しみにしたいのは、これからそういった国になりえる可能性を持っている国々。実は今日もさっそく、タイムリーなニュースが。レッドソックスへトレードされるジェイク・ピービーの代替先発として、WBCブラジル代表のアンドレ・リエンゾが初登板初先発。しかも対戦相手インディアンスのラインナップには彼より一足先にブラジル出身者として初めてのメジャーリーガーとなったヤン・ゴメスが名を連ねていて、夢のMLBにおけるブラジル人対決が実現。マイナーにも有望な選手が既に控えていますし、今後はもっとこういった機会が増えていくかもしれない。リエンゾやゴメスの世代を頂点に、ブラジル野球はもっと広がっていく期待は大きい。ただ、オーストラリア同様輸出が中心で国内の野球リーグの発展が遅れている分、同じような行き詰まりがその先には待っているような気もしますが・・・。やはりこういったものは、娯楽が多くない国、国際レベルで戦えるスポーツがない国、経済的にはあまり恵まれていない国の方が一人をきっかけに広がりを見せる傾向に強い。そういった意味ではホンジュラス出身でパイレーツ傘下のチームでプレーするオーランド・カストロなんかも楽しみな素材と言えるでしょうか。今年は1Aで好成績を挙げているのですが、まだ特に今後の活躍は保証されているわけではない。とはいえ、ホンジュラス中心に中米の国はパナマやニカラグアを除いたサッカーが盛んな国でもある程度野球の土壌が存在しているわけで、きっかけ次第では大きな発展を見せる可能性のある地域だったりする。エルサルバドルやグアテマラといった国がホンジュラスと同じような立ち位置の国として挙げられるでしょうか。きっかけ、起爆剤と呼べる存在になりうるものは、必ずしもその国で生まれ育った人間でなくていはいけないのか?と聞かれるとそうではないと答えることのできるケースも存在する。先日、フィリピンのニュースサイトを眺めていたらフィリピン野球の発展に向けての課題を論ずるコラムがあったのですが、最後にこう締めくくられていた。「野球にもヤングハズバンドのようなハーフのスターが必要だ」と。ヤングハズバンドというのは同国サッカー代表のフィリップ・ヤングハズバンドの事を指す。フィリピンは他の東南アジア諸国と違ってアメリカの影響でバスケットボールが盛んな国柄。従って東南アジアの中でもサッカーの弱小国という位置づけだったのですが、フィリピン系のヨーロッパ育ちの選手を帰化にさせることによって強化に成功、他の東南アジア勢にも今は引けを取らない。そのチームの中でも中心選手として活躍するフィリピン系イギリス人のヤングハズバンドはルックスの良さもあって人気が高く、フィリピンサッカー代表、通称アスカルズのアイコンとも言える存在。サッカー人気の向上に一役も二役も買っている。サッカーだけでなく、ラグビーや国技のバスケにもこういった選手は多くフィリピンの世論的にも同胞として受け入れる傾向にあるだけに、野球でもこういった選手がきっかけになりうるかもしれない。これまでのフィリピン代表はフィリピンで育った選手で戦うのが基本線で、WBC予選ではある程度フィリピン系選手が「解禁」となったものの、期待されていたような質や量の選手を呼ぶことは出来なかった。ティム・リンスカムを始め、MLBで活躍するフィリピン系選手も決して少なくないだけにそういった選手を上手いこと取り込むことが、野球を発展させるうえでフィリピンの場合は鍵を握っているように思う。さて、昨今はメジャーリーガーの出身国もよりバリエーションが広がってきた。ブラジルに、イタリア、オランダ本土、ドイツ。ちょっと前にはバハマやグアムの選手もいたりとか。昔じゃ考えられなかった国が多い。そういった流れの中で、ミューレンスやニルソンのように後輩への道を作り、その国の野球の発展を大きく促すような存在はまだまだこれから出てくるかもしれない。そういう視点でメジャーリーグとマイナー国の発展を想像してみるのも、結構楽しいかもしれない。共有できる喜びかどうかは分からないけど、少なくとも俺自身は間違いなく楽しい。変なやつだよね

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