ひさびさのオーストラリア。この前に来たのは、プロリーグ、オーストラリアン・ベースボール・リーグ発足の2010年だから4年前になる。その頃と比べて、このリーグを取り巻く環境も、随分と変わっていた。シドニー郊外、ブラックタウンにあるスタジアムは、チーム名をとって、ブルーソックススタジアムと名を変え、スタンドを増設していた。それだけ野球人気も上がっているのだろう。スタンドを見ても以前には見られなかったチームのジャージを身にまとったファンが大勢いた。ジャージには背中に選手の名前が入っているものもあり、メジャーでもプレー経験のある看板選手、トレント・オエルチェン(イタリア・ボローニャ)が一番人気だそうだ。(トレント・オエルチェン)この日の試合は、ブリスベン・バンディッツとの試合。日本球界となにかと縁の深いオーストラリア、両軍には元オリックスの具台晟(現シドニー・ブルーソックス)をはじめ、多くの日本野球経験者がいる。ちなみに、いろいろと取材の世話を焼いてくれた、ブルーソックスのアルバイトスタッフの高校生もまた野球をプレーし、ジュニア時代は代表選手として日本にも行ったことがあるという。 「日本と試合やる時はケンコーボール(こっちでは軟球のことをこう呼ぶらしい)でやったんでびっくりしたよ」と語る彼からは、トップレベルから少年野球まで、日本とオーストラリアがつながっていることがうかがえた。 この日の両軍の先発投手は、シドニーがドイツ人投手、マーカス・ソルバック(ダイヤモンドバックスA級)、ブリスベンが高塩将樹(前BCリーグ・富山サンダーバーズ)。多国籍なこのリーグならではの組み合わせとなった。(2勝目を挙げた高塩) 高塩は初回、2アウトを簡単に取るが、3番デイビッド・カンディラス(ロッキーズ2A)、4番オエルチェンに連続ヒットを浴び、ピンチを迎えるも後続を断ち切り、無難な立ち上がりをみせた。 対するソルバックも危なげない立ち上がりを見せ、両ピッチャーともばらつきはあるものの、力のある球で相手打者に付け入るスキを与えない。(好投するも2敗目を喫したソルバック) 試合が動いたのは4回、ヒットの後、ワイルドピッチでランナーを得点圏に進めたところで、グランデン・ゴーツマン(デビルレイズA級)がライトへ3塁打を放ち、ブリスベンが先制、この回ブリスベンはもう1点を追加し、試合を優位に進めていく。 それでもソルバックは崩れることなく7回途中まで投げ続け、ブリスベン打線を計5安打に抑えたが、ランナーを残してマウンドを去った後、後続のピッチャーが追加点を許してしまった。一方の高塩は、6回を4安打無失点と完璧なピッチング。疲れが見え始めた5回も、11番が打った大飛球はあわやかと思われたが、これもライトのグラブに収まった。最終の6回は、台湾の義大ライノスから武者修行にやってきたサード、ヤン・クヮンウェイがレフト前に抜けようかというゴロをうまくさばき、事なきを得た。(ヤン・クヮンウェイ)
7回表を終わり3対0。ここまでの投手戦を考えれば、このまま試合が終わってもよさそうだが、終盤に試合が荒れるのは4年前と変わらなかった。リリーフ陣の弱さは相変わらずだった。
8回にもブリスベンは、四球と連打で追加点をあげる。これにはシドニーベンチもたまらずベテランのトッド・グラタン(元四国アイランドリーグ・香川オリーブガイナーズ)をマウンドへ。結局、この攻撃で3点を追加したブリスベンは、試合を決めたかに見えた。(トッド・グラタン)しかし、試合はこれでは終わらない。高塩を継いだジャスティン・エラスムス(元WBC南アフリカ代表)が不安定な投球を見せたせいか、ブリスベンは8回からスティーブン・チャンバス(元関西独立リーグ・大和侍レッズ)を送るが、これが完全に裏目に出る。シーズン当初先発を務めながらも、高塩の加入によりリリーフに回ったチャンバスは、まだ新しい仕事に慣れていないのか、ヒットを許すとストライクが入らなくなった。ここから3連続四球で押し出し。監督のデーブ・ニルソン(元中日・登録名ディンゴ)も、ここでたまらず投手交代。替ったジェイソン・ジャービスもいきなりレフトに返され、土壇場でシドニーも2点を返した。結局、試合は最後に出てきた後藤正人(前アイランドリーグ・香川)が、なんとか抑え。ブリスベンが勝利した。(後藤正人)試合はともかく、日本野球経験者のオンパレードで、改めて両国の野球を通した絆を感じた試合だった。
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