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Channel: 野球:海外/独立リーグ
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カン・ジョンホのメジャー移籍挑戦に関する雑感――選手のメジャー「流出」を肯定的にとらえる(附:韓国時代の成績)

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韓国ネクセンヒーローズの遊撃手カン・ジョンホ(姜正浩)がポスティングによる米球界移籍を希望している。複数球団が獲得に関心を示しているとの報道もあり、もし米球界移籍となれば、KBOでプロのキャリアを開始した野手として初めての「メジャーリーガー」誕生の可能性がある(→カン・ジョンホの韓国時代成績と短評に関しては記事末尾。守備率追加しました)。ところが、もしカン・ジョンホの米球界進出が実現した場合、韓国プロ野球に負の影響も与えることが心配される。 2012年まで8球団体制で運営していた韓国のプロ野球は2013年に9番目の球団であるNCダイノスが1軍に参入を果たし、来年2015年には10球団目のktウィズの1軍参入を控えている。急速なリーグ拡張に伴い各球団の選手層が薄くなっており、より安定した選手供給が求められるようになってきている。そのような中で日本球界だけでなく米球界にまでトップクラスの選手が流出するようになればリーグのレベル低下が懸念されるであろう。だがトップ選手の海外「流出」は果たしてリーグ全体にとって損失ばかりなのか。肯定的な側面についても考えてみたい。肯定的な側面として、まず第一に、今回のポスティングによる移籍が韓国球界でのプロデビューを経て後に米球界に挑戦するモデルケースとなり、アマチュア選手の海外流出に一定の歯止めをかけることができるかもしれない点を挙げることができる。アマチュア選手の米球界に流出は、競技人口を考えると韓国は日本よりも深刻である。今年もktが指名を予定していたヤタプ高の内野手パク・ヒョジュンがニューヨークヤンキースと契約をするという出来事があった。一方で近年は米球界の下部組織からメジャーまで上がる韓国出身の選手が以前に比べ減少し、現在はテキサスレンジャーズのチュ・シンス(秋信守)のみである。投手としてはリュ・ヒョンジン(柳賢振)がロサンゼルスドジャーズで活躍しているが、彼はアマチュアから直接米球界に挑んだ訳ではなく、韓国のハンファイーグルスでデビューした後、ポスティングで米球界に移籍した選手である。もし野手でも韓国球界でプロデビューを果たしメジャーデビューをする選手が現れたなら、アマチュア選手の動向に今後多少影響するかもしれない。韓国では兵役制度があるため、米球界に直接挑戦したとしても兵役義務履行のため2シーズンアメリカを離れなければならない時が来る。韓国でプロデビューをした場合は、兵役問題を解決した上で米球界に挑戦できるというメリットがある。野球がオリンピック競技から外れたため、今後国際大会での兵役免除は難しくなるかもしれないが、現時点では兵役義務を履行しながら2軍の試合にでることができる制度(尚武フェニックス、警察野球団)があるため、野球を続けながら兵役問題を解決することは可能である。しかしこのメリットに関しては、今後成功事例を増やすことが早急に求められる。昨オフにFAで米球界に移籍した元KIAタイガーズのユン・ソンミン(尹錫珉)は今季メジャーデビューを果たすことができず、今オフポスティングによる米球界移籍を目指したSKワイバーンズのキム・グァンヒョン(金廣鉉)とKIAのヤン・ヒョンジョン(梁玹種)は、契約条件、あるいはポスティング金額の問題で米球界移籍すら果たすことができなかった。韓国ではポスティングによる海外移籍には1軍でのプレーが7シーズン、FAによる海外移籍には9シーズンが必要であり、ただでさえ海外進出が遅くなるというデメリットがある。韓国でプロデビューし、そこから直接メジャーデビューしたリュ・ヒョンジンのような選手が他にも出てこなければ、韓国球界を経るメリットは薄れてしまうであろう。アマチュア選手流出に歯止めをかけること以外にもうひとつメリットを挙げるならば、米球界に対する理解の向上によりその技術が韓国球界でも取り入られる可能性である。もう少し単純な言い方をするならば、選手の米移籍がきっかけとなり、プレースタイルに何らかの「ブーム」が起こる可能性である。野球がオリンピック競技から除外され、プロリーグのトップ選手が参加する世界規模の大会がWBCくらいしか無くなった今、韓国のトップ選手が国際大会を経験する機会は少なくなっている。来年はプレミア12が予定されているが、現状では兵役免除になる野球の大会はアジア競技大会だけであるため(それすら今後どうなるかわからないが)、どれだけ本腰を入れて臨むのかは疑問である。そのような中で2013年のWBCでは1次リーグで敗退してしまい、オランダ、オーストラリア、台湾との対戦のみに終わった。この大会では選手選抜に関する批判が目立ってしまい、敗退の内的要因に関しては問題点が議論されたものの、外的要因に関しては議論が深められたとは言い難い。結果として、海外でのプレースタイルの流行り廃れなどに関してもそこまで大きな関心は持たれなかったし、韓国プロ野球に関して技術的な問題とその解決策が具体的に示されることも少なかった。もし韓国トップクラスの選手が米球界に移籍して壁にぶつかった場合、その原因に関して韓国でも関心が寄せられることが考えられる。するとプロ野球においても米球界を意識した新たなプレースタイルの模索が急速に進む可能性があるのではないだろうか。今季、韓国プロ野球は極端な打高のシーズンであっただけに、特に投手に関して新たなプレースタイルの模索が進んで投球の幅が広がり、打高投低解消の手助けとなればと思う。その点からも野手であるカン・ジョンホが移籍してメジャーの投手と対戦することとなれば興味深い。さて、そのカン・ジョンホの米球界移籍は成し遂げられるのであろうか。先述のように、今オフ韓国プロ野球からは2人の投手がポスティングによる移籍を目指したが、評価が高くならず移籍を断念することになった。カン・ジョンホはキム・グァンヒョンと異なり大きな怪我はなく、ヤン・ヒョンジョンと異なり毎年安定して一定以上の成績を収めているが、これまで野手のポスティングがなかっただけにその結果を予測することは難しい。カン・ジョンホが所属するネクセンは他の球団とは球団経営の方針が異なっているため、キム・グァンヒョンのポスティングを受諾したSK(ポスティングは受諾したが契約がまとまらず破談)に比べると、球団が了承することのできることのできる金額の条件は厳しくなるだろう。攻守ともに長所と短所のはっきりとした選手だけに評価がどのように転ぶかはわからないため、金額面を譲ることが出来ないネクセンの希望額に届かずポスティング受け入れとはならない可能性もあるように思う(例えば現在一部メディアが最低ラインと予測する500万ドル程度、あるいはそれを割った場合。但し下限を300万ドルと推測するメディアもある。ところが期日が迫ってくるにつれ韓国メディアの期待額は膨らみ、それらの推測は韓国ではあまり取り上げられなくなった)。果たして米球団はネクセンが納得するポスティング額を提示することができるのか。ポスティングは韓国時間の明日20日午前7時に入札締切を迎える。今後の韓国球界の分岐点にもなる可能性があるだけにその結果が気になるところである。☆カンジョンホの韓国時代打撃成績及び打撃成績リーグ平均☆カンジョンホの年度別遊撃守備率 2009 .976 2010 .962 2011 .977 2012 .978 2013 .976 2014 .981 ☆カンジョンホ短評今季の打撃成績はリーグ全体が極度の打高傾向にあったことを考慮しても突出して良かったが、これまでのシーズンをみる限りでは今季は出来すぎの感がある。キム・グァンヒョンやヤン・ヒョンジョンにも言えることだが、海外移籍挑戦を目指すシーズンということでモチベーションが高かった影響もあるかもしれない。ただ2012年と2013年も好成績を収めており、選手としては現在がちょうど脂の乗った時期であるとも言える。打率に関しては今年が異常に高かったものの、通算打率が3割に届いておらずリーグ内で飛び抜けた存在とは言えないが、それでも韓国では少なくとも2割台後半の成績を残す力はある。もっとも日本移籍した選手がことごとく打率を落としていることを考えると、米移籍した場合も数字を落とすことは考えられ、メジャーではある程度適応できたとしてもリーグ平均程度に落ち着く可能性がある。一方で長打力はこの3年間、リーグ内において高水準を維持しており、コンスタントに出場できれば2桁本塁打が可能ではないかと思う。今年の本塁打数は出来すぎた成績であるが通常時でも20本以上打つだけの力はあるので、試合数が増えるメジャーでは15本程度も期待できるのではないか。ネクセンの本拠地のモクトン球場はフェンスが低い上に球場規模もそこまで大きくないが、シーズン後半を中心に本拠地以外でも本塁打を放っているのでそこまで大きな問題にはならないであろう(6月20日時点で本塁打20本中14本がモクトン球場で放たれていたが、最終的にはモクトン球場21本、その他の球場19本に落ち着いた)。ところで出場機会を確保するためには守備が問題となる。肩が強く遊撃手を始め内野複数ポジションをこなせることが強みであるが、一方で集中力を欠いたときにミスが出る点には課題がある。守備も打撃同様に若干のムラがあるように感じる。また韓国には天然芝の球場もあるが本拠地のモクトン球場は人工芝であるため、天然芝の球場でも韓国同様の守備能力を発揮することができるかにはかなり不安がある。但し今季の韓国の打高投低の原因のひとつとして、芝の手入れがよくない球場があって守備に影響したことを挙げる声もあるため、芝の違いはマイナスにもプラスにもなり得る。走塁に関しては、2012年こそ20盗塁以上で成功率が80%を超えているが、足そのものは速くないためキャリア通算で見ると盗塁数はそこまで多くなく成功率も高い訳ではない。全体的に見た時、能力最大値は高いがパフォーマンスを高レベルで安定して発揮するのは難しい印象である。

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