KBOリーグ10球団の年齢別の野手成績を以下に整理してみた。12月31日時点の満年齢を基準として25歳以下、26~30歳、31~35歳、36歳以上に分けて整理した。25歳には1991年1月1日~12月31日生まれが該当し、早生まれは考慮していない。なお外国人選手を含めると26~30歳及び31~35歳の比重がより高くなるため、外国人は除外している。 まず全体的な傾向を見ると打席、安打、本塁打ともに26~35歳の選手に集中している。NPBと比べると25歳以下の比率が低くなっており、その分、他の年齢帯の比率が少しずつ高くなっていると言える(下記埋め込みツイート参照/aozoraさんのツイートを引用させていただいています)。安打と本塁打も入れてまとめ。ちなみに年齢は今年の12/31に何歳になるかという取り方をしています。例えば1990年1/1~12/31までが誕生日の選手は皆26歳の選手として集計しています。 pic.twitter.com/n5plhy3dGd— aozora (@aozora__nico2) 2016年 6月 5日 韓国では兵役があり、兵役免除にならない多くの選手は入隊により2シーズンほどチームを離れなければならない(陸軍に現役入隊の場合の兵役服務期間は1年10ヶ月)。テストに合格した場合、尚武や警察野球団でプレーをしながら兵役義務を履行することも可能であるが、その場合においてもプレーできるのはフューチャーズリーグであり、1軍の試合に出場することはできない。近年は早期入隊傾向が強くなっているため、韓国の若手起用率の低さにはその影響も想定される。 しかしそれにしても若手起用が極端に低いのには、実力の世代間の格差が大きいことの影響も考えられる。91~94年生まれに関しては、それよりも上の世代に比べ同年齢基準でも長打力で劣っているようである。加えて選手生命が長くなってきているため、今の若手世代はその影響を大きく受けてしまっている(→過去記事参照)。 とはいえいつかは世代交代を避けて通ることはできない。だが結果を残しながら急激に多くのポジションで世代交代を図るのは難しいため、漸進的な世代交代が望ましいように感じられる。それでは各球団の若手野手起用状況はどのようになっているのか。前編と後編に分けて現況と展望を整理していきたい。 前編ではトゥサン、サムソン、NC、ネクセン、SKを整理した。文章は6月7日時点の状況を参照して作成した。残り5球団は後編に回す。○トゥサン 野手の平均年齢が10球団で2番目に若い一方で、25歳以下の選手の起用打席は2番目に低い。これは20代後半の選手及び85年生まれの選手でほとんどの打席を占有しているためである(50打席以上の選手は全て85~90年生まれ)。ピークやその前後の時期を迎えた選手が多いこともあってか、チーム打撃成績は他の9球団に大きく差をつけており、チーム打率は唯一の.300超え、本塁打もチャムシルを本拠地としながらトップである。年齢層の特徴もあって急速な世代交代は必要としていないが、主力選手の年齢が一極集中していることを考えると、バックアップを充実させていくことで将来的な世代交代に備えたい。 全体的に選手が若く野手の選手層がしっかりしているため、25歳以下の若手にとってスタメンでの出場は困難であるが、外野手だと俊足大卒ルーキーのチョ・スヘンや兵役義務を終え復帰したキム・インテとイ・ウソン、内野手だと守備に定評のあるリュ・ジヒョクや大卒ルーキーのソ・イェイルあたりが1軍入りして控えからチャンスをうかがいたい。 チョン・スビンに兵役義務が残っているので、若手外野手は来季以降、彼の入隊時に空く外野1枠に滑り込みたいところであるが、チョン・スビンと同じく90年生まれのパク・コヌも控えており、年齢が近い若手選手にとっては大きな壁となる。 捕手では正捕手ヤン・ウィジに負担がかかっているため、バックアップ捕手の充実が急務となる。パク・セヒョクとチェ・ジェフンがいるが、ヤン・ウィジとの年齢がそこまで離れていない。捕手育成には定評のあるチームなので、今後新人ドラフトで将来を見据え有望な高卒捕手を指名するのも悪くないかもしれない。○サムソン 昨年の新人王ク・ジャウクがレギュラーとして定着しており(現在故障で1軍抹消中)、一見すると選手起用の年齢のバランスは悪くない。但し20代後半の選手が他球団に比べ長打力で劣っており、今後このウィークポイントをどのように補完していくかが課題となる。 リュ・ジュンイル監督就任当初は打力のある中堅選手を守備走塁に優れた若手選手の抜擢で補ってきてバランスの取れたチームを作ってきたが、その分長打力のある選手の育成は遅れている。イ・スンヨプやパク・ハニが引退する前に若手大砲候補を発掘しておきたい。 ク・ジャウクを除く若手内野手では、キム・サンス負傷時にキム・ジェヒョンが機会を得て、安定した守備で穴を埋めたが、打力には課題があり兵役義務も残っている。内野手パク・ケボムや外野手チェ・ソノは監督の信任を比較的受けているようであるが、やはり打撃が物足りず兵役義務も残っている。 兵役を終えた大砲候補には昨年2軍でチーム最多本塁打のムン・ソニョプがいるが、守備の評価が低く3軍で干されている。LGから2次ドラフトで移籍してきたナ・ソンヨンが、1軍での活用が難しく中途半端な年齢にもかかわらずチーム内で最も多く2軍で打席を消化してしまっている現状から想像されるように、打撃重視のポジションでは2軍でも若手の成長が進んでいない。年齢としては中堅に差し掛かっているが、打撃でも活躍が見込めるのは、来季尚武から復帰する外野手キム・ホンゴンくらいであろうか。○NC
守備の不振で一時期2軍落ちしていたが若手では二塁手のパクミヌがレギュラーであり、25歳以下の起用も他球団よりは多い方である。一方でイ・ホジュン、ソン・シホン、イ・ジョンウクを抱えており、36歳以上の起用がリーグで最も多いため、起用野手の平均年齢はやや高い。89年生まれのナ・ソンボムが含まれるので年齢帯別の成績自体は悪くないが、26~30歳の選手の起用が比較的少ないのも特徴と言える。 外野手ではイ・ジョンウクが中堅手を担っているため、攻守両面において近いうちの世代交代が望まれる。キム・ソンウクやキム・ジュヌァン、カン・グソン、あるいはチェ・スンミンや俊足ルーキーのイ・ジェユルあたりがポジションを奪っていかなければならず、かつ彼らはカン・グソン以外兵役義務が残っているため、複数の選手が活躍の可能性を見せなければならない。現状では戦力が充実しているので、控えあるいは左翼手キム・ジョンホに代わるスタメンとして出場機会を得て経験を積みたい。 内野では遊撃手ソン・シホンがいまだ健在であるが、複数年契約が切れる頃には他の選手がレギュラーを奪えるようになりたい。もっとも1軍起用に耐え得る遊撃手を今の2軍に求めるのは難しく、当面はユーティリティプレイヤーのチ・ソックン、あるいは補強で乗り切らなければならない。せめて尚武で軍服務中のノ・ジニョクが成長して帰ってきて欲しい。○ネクセン 昨年はカン・ジョンホが抜けた穴を高卒2年目(当時)のキム・ハソンが埋め、今年も引き続き活躍している。加えて今年はユ・ハンジュンが抜けた外野陣に高卒3年目のイム・ビョンウクを抜擢し、ベテランのイ・テックンを中堅手から右翼手にコンバートして中堅手を任せている。イム・ビョンウクは開幕当初不振に悩まされたが、徐々にそのポテンシャルを開花させつつある。 期待する選手に1軍で集中的に打席を与えることによって若手を育てており、イム・ビョンウクが期待に応え成長すればキム・ハソンとともに将来の内外野の要となろう。 捕手では正捕手パク・トンウォンが90年生まれで兵役も終えているだけでなく、バックアップのキム・ジェヒョンも93年生まれで同じく兵役を終えている。長期的には1次指名の高卒ルーキーであるチュ・ヒョサンも育成していきたいが、まずは2軍で経験を積み、その後に尚武や警察野球団で兵役問題を早期に解決という手順を踏むと考えられる。 ポジションによってはベテラン選手もいるが、チーム全体で見ると打席基準の起用野手の平均年齢はリーグで最も若く、同時並行的に1年で複数の若手レギュラーを作る必要はない。ヨム・ギョンヨプ監督のもとでの、この「選択と集中」の方針が、ひとつのモデルとして根付くことを期待している。○SK
起用野手の平均年齢はほぼリーグ平均程度であるが、25歳以下と36歳以上はともにリーグ最少の打席数である。若手を中心に長打力のある選手が少なく、ベテランのパク・チョングォンを除くと、長打はチェ・ジョンやイ・ジェウォン頼みになっていたが、昨年途中にチョン・ウィユン、昨年オフにチェ・スンジュンが加わったことでやや補完された。 一方で一塁手パク・チョングォンと外野手のキム・ガンミン、チョ・ドンファはベテランながら複数年契約が残っている。このうち守備の負担が大きい中堅手に関しては世代交代が必要かもしれない。若手だとイ・ジンソク、中堅だとキム・ジェヒョンがその候補だが、守備重視のポジションとはいっても1軍レベルでは打力に物足りなさがある。せめてチョ・ドンファからバックアップのポジションを完全に奪い取るだけの結果は残したい。今は1軍にキム・ガンミンとチョ・ドンファが不在のため2人とも1軍にいるが、中堅手要員は他にパク・チェサンしかいないため、アピールチャンスである。 内野ではチェ・ジョンが健康であればそこまで問題ないが、今年は遊撃手を外国人選手のゴメスで補っていることに注意が必要である。今年キム・ソンヒョンが打撃好調であるが、守備面の不安から彼に遊撃手を任せるには不安がある。高卒3年目のユ・ソジュンや2次ドラフトで移籍してきた高卒2年目のチェ・ジョンヨンはまだ戦力として期待をかける段階にはないが、将来的にはレギュラーを狙いたい。また遊撃手は難しいが、兵役問題解決済みの92年生まれパク・ケヒョンにも奮起を促したい。
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