西アフリカから日本へ野球選手を呼び寄せ、日本のチームと対戦させようというプロジェクトが進行している。アメリカの野球草創期、このスポーツをビジネスにしたアルバート・スポルディングは、このスポーツを世界に「布教」すべく、メジャーリーガーを集めて世界中をかけ巡って試合興行をしたが、それから1世紀あまり経った今、今度はその「布教」の成果を、東洋における野球の中心地である日本で試そうという試みがなされようとしているのだ。 近年、先進国のNGOによるスポーツを通じた途上国の開発援助が盛んである。「開発援助」というと、道路建設に代表されるインフラ整備や食糧や衣料品の援助が多くの人の頭に浮かぶだろうが、古来「パンとサーカス」という言葉があるように、胃袋を満たすだけでは人が真に生きているとは言えない。「遊び」こそ人と他の動物を分かつ大事なものであることに異論の余地はないだろう。そう考えると、貧困にさいなまれている開発途上国の人々にスポーツという娯楽を提供することもまた、重要な開発援助なのだ。 日本発のこのような援助の特徴的なもののひとつに野球普及活動がある。現在までに、ガーナ、ジンバブエ、タンザニア、ウガンダ、そして今回紹介するブルキナファソへの普及活動が行われている。 「ブルキナファソ野球を応援する会」は、かつてこの国にJICAの青年海外協力隊員として2008年から2年間野球普及に携わった経験をもつ富良野在住の出合祐太さんが立ち上げたNGOだ。彼の活動の中から、「ブルキナファソ初のプロ野球選手」としてサンホ・ラシィナが、高知ファイティングドッグスで昨年デビューしたことは本ブログでもすでに報じた。 この活動をさらに拡大して、「ブルキナ野球会」では、昨年西アフリカ一円の選手を対象にトライアウトを開催、選抜チームを作って、日本に呼び寄せて何試合かしようという企画を立てたのだ。この遠征が、彼ら選手にとって、独立リーグやクラブチームなどへの「ショーケース」になるのは言うまでもない。 ただ問題はその資金だ。貧困にあえぐ、西アフリカ諸国の少年たちに日本への渡航費、滞在費をまかなえるはずはない。ラシィナの場合のように一人ではなく、チームごととなると「ブルキナ野球会」単独ではとてもではないが費用負担はできない。そこで思いついたのが、クラウドファンディングだ。クラウドファンディングとは、なにかプロジェクトを起こしたい不特定多数の人がインターネットを利用して広く財源を集めることで、現在多数のサイトを経由して資金集めが行われている。 本プロジェクトでは、日本最大級のクラウドファンディングサイト「readyfor」において、「プロ野球を目指すアフリカの裸足の野球少年団を日本に招きたい!」のタイトルで資金集めをしている。今なら、対戦予定の北海道日本ハムファイターズOBからサイン色紙、サインボール、ユニフォームなどのリターンがある。 3月16日、残り16日という現在、目標額350万円に対し、集まっている額は約半分。クラウドファンディングは、目標額を達成すれば、資金は出資者から企画者に渡るが、達成されないと話はお流れになる。 「ブルキナ会」は、今季も二人目のプロ選手として、ザブレ・ジニオをルートインBCリーグに送り出している。「野球普及を通じて国民の誰もが夢に挑戦する社会づくりをしたい」という代表の出合氏。その志を継続させるためにも、このプロジェクトは成功させなければならない。読者の皆様にも、ぜひともご支援願いたい。
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