リーグ全体が渇望している右の若手巨砲。そのような存在になり得る選手がロッテに存在する。 今年高卒7年目を迎える1991年生まれの内野手オ・スンテク。昨年は遊撃手を中心に内野全ポジションでの出場があった。彼の持ち味ははまったときに見せる爆発力にある。 昨年5月23日のLG戦、レギュラーのファン・ジェギュンの欠場により8番三塁手として出場すると、3打席連続本塁打に二塁打2本で計7打点を挙げる活躍を見せた。遊撃手可能な選手としては韓国でも比較的大柄であり、リストの強さにも定評がある。この試合で彼は潜在能力の一端を見せつけた。昨年は最終的に122試合に出場し、327打数で打率.275、8本、43打、15盗塁の成績を収めた。 三振100に対して四球17と全体的に荒削りな印象はあるが、まだまだ発展段階であることを考えると、これから1軍への適応が進めば改善の余地はある。それよりも問題は守備にある。 昨年最も出場の多かった遊撃手では340.2守備イニングで11失策を犯し、守備率.936であった。この他に一塁手でも5失策(守備率.978)し、コーチやファンから守備の安定感が問題視された。守備位置を固定できなかったことも原因にあるが、ステップがぎこちなく送球も不安定な印象を受ける。一方で三塁手や二塁手で出場時には失策をしておらず、内野手として全く素質がないという訳ではない。 だが守備の問題は選手本人にも負担を与えている。三塁手出場時には打率.333/出塁率.379/長打率.600であるのに対し、遊撃手出場時は.242/.279/.336と成績を大きく落としている。三塁手に専念させて守備の負担を減らすことができれば、打撃の才能を発揮させやすくなる。しかしそうするためにはチームの正三塁手ファン・ジェギュンが大きな壁として立ちはだかる。 ファン・ジェギュンは順調に行けば今シーズンオフにFA資格を取得する予定である。もし彼が流出することがあれば、オ・スンテクを三塁手にコンバートさせるのもひとつの手段であろう。ファン・ジェギュンがそうであったように、遊撃手から三塁手にコンバートさせれば、コンバート後には守備が安定する可能性もある。だが、少なくとも今年まではファン・ジェギュンがチームにおり、彼の去就もわからない以上、今年に関しては、内野で最も手薄な遊撃手で出場するのが、オ・スンテクのレギュラー確保への道となろう。 遊撃手レギュラー確保のためには、32歳のムン・ギュヒョンとポジション争いをすることになる。守備面ではまだ及ばないが、打撃面では現時点で十分にムン・ギュヒョンを乗り越えるだけの力をもっている。 示範競技では、3月12日の時点で、オ・スンテクが9打数4安打、二塁打2本、本塁打1本、四球4、三振0、打率.444の成績を、ムン・ギュヒョンは7打数3安打、二塁打1本、四球1、三振1、打率.429を記録している。両者ともに強力なアピールをしており、シーズン開幕前から熾烈なレギュラー争いは始まっている。オ・スンテクに関して言えば、好調な打撃は勿論、すでに四球を4つ選ぶことが出来ているのが昨年からの成長と言えよう。 春季キャンプでの収穫として、オ・スンテクは守備の上達を挙げている。これはチョ・ウォヌ監督も認めるところであり、守備の向上が打撃成績の安定にも繋がることを期待している。 カン・ジョンホがアメリカ球界に移籍した今、韓国の大型内野手といえば、左打者ではあるがLGのオ・ジファンがまず思い浮かぶ。90年生まれのオ・ジファンはオ・スンテクと1歳しか違わないが、攻守ともに韓国球界を代表する遊撃手に成長した。オ・ジファンも最初は不安定な守備が問題視されたが、我慢強い起用とコーチの指導、そして自身の努力によってそれを克服し、強肩と守備範囲に加えて、安定感と状況判断能力を獲得した。 1軍経験が大きく違うオ・スンテクに、オ・ジファンのような攻守両面の活躍、特に守備での貢献を今すぐ期待することは難しいが、我慢強く起用すれば得られるものが多い。実力では2軍レベルを卒業しており、あとはどれだけ1軍で出場機会を得られるのかが成長の鍵となろう。 来年以降もオ・スンテクが引き続き遊撃手としてプレーするのか、あるいは三塁手にコンバートされるのかは、オフのチーム編成や首脳陣の意向次第である。しかしいずれのケースであっても、与えられた場所で発展した姿をまずは今年見せることがオ・スンテクには重要である。
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