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韓国球界のトミー・ジョン手術経験者(改訂1版)

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 以前「韓国球界のトミー・ジョン手術経験者(暫定版)」という記事で韓国プロ野球のトミー・ジョン手術の状況を整理した。その後、事例が増えたため、前回の誤植訂正を兼ねて改訂版を作成することにした。 韓国大手のポータルサイトNAVERでニュース検索をし作成したが、報道が誤っている可能性もあるので正確性は保証できない。 また手術当時1軍実績の乏しい投手は、手術時にはニュースにならず、復帰後1軍で活躍してから記事になる場合もある。シーズン終了後に手術を受け保留選手名簿から除外されて(形式的に一度放出されたことになる)、入隊(現役でなく社会服務要員のケースが多い)した場合には、服務期間が終わった後に元の球団が再び契約しないこともあると見られ、手術の事実が知られないままプロを去って行く選手もいる可能性がある。そのため手術を受けた実数はもっと多いのではないかと予測される。本記事のリストはあくまでも網羅されたものではないことはご承知いただきたい。 単に「肘の手術」となっているものは除外したが、特に古い記事ではその中にトミー・ジョン手術が含まれている可能性もある。逆に骨棘除去手術等をトミー・ジョン手術と勘違いした記事も存在している可能性があるため、ソースの少ない事例には注意が必要である。 それでは早速手術事例を見ていこう。まずは韓国時代に受けた韓国人投手を2009年以前と2010年以後に分けて掲げる。韓国時代にトミー・ジョン手術を受けたプロ経験韓国人投手(~2009年)表の塗り潰しは黄色が引退もしくは無所属選手、青色がアマ時代(便宜上卒業年度12月まで)に手術を受けた選手、黄緑色はアマ時代に手術を受け現役を引退した選手を示す韓国時代にトミー・ジョン手術を受けたプロ経験韓国人投手(2010年~)続いて韓国人投手が海外球界時代に手術を受けた事例を確認する。最後に野手でトミー・ジョン手術を受けた事例(韓国球界時代・海外球界時代両方含む)を挙げよう。 以上を見ると韓国でのトミー・ジョン手術の事例は少なくともNPBでの事例に比べ多いと推定される。 球団別に見ると、判明している事例のみでは2009年まではサムソンの7件(6人)が最も多く、10年以降はネクセン(7件)とKIA(9件/うち3件はデビュー前)が目立つ。 手術の決定に関する球団ごとの方針の違いも想定されるが、KIAに関してはドラフトでの新人指名段階に問題がある可能性も否定できない。2010年以降に指名した各年度の最上位指名選手のうち5人が入団3年目以内までにトミー・ジョン手術を受けており(事例75シム・ドンソプ、事例60ハン・スンヒョク、事例89パク・チフン、事例85ソン・ドンウク、事例87チャ・ミョンジン)、昨年の1次指名大卒ルーキーであるイ・ミヌもトミー・ジョン手術かは不明であるが肘の手術を受け、その後社会服務要員として徴兵義務を果たしている状態である。ハン・スンヒョクのように手術を前提して指名したケースもあり、高卒選手に関してはあまり考慮する必要がないかもしれないが、即戦力が期待される上位指名の大卒指名選手が早い段階で手術を受けているのは指名段階でのコンディションの見誤りもあるのかもしれない。 ネクセンは最近肘頭骨疲労骨折を起こした事例106チョ・サンウにトミー・ジョン手術を合わせて受けさせる決定をしたが、これはキム・ジンソプ整形外科及びチュンム病院の意見を聞き、将来のためこの機会に早めに肘の問題を解決しておくことにしたためだとされる。 手術時の年齢に関してはプロ入りすぐ手術を受けるような若年での手術も目立つが、必ずしも若い時期に偏っているとも言い難い。 手術を受ける場所に関しては判明しているもののみ表記したが、表記のないものの多くが韓国での手術だと推測すると、近年は特に韓国での手術が多い。 アメリカでの手術事例は以前、主力選手を中心にしばしば見られたが、2013年以降は1件のみと減少傾向にある。 日本での手術は元々そこまで多く見られなかったが、2回目以降のトミー・ジョン手術を受ける場合など最近でも活用されることがある。昨年の事例97イ・テヤンが横浜南共済病院で受けているのは、現行体制のハンファ球団が日本でのキャンプの際などを中心によく利用していること、その関係でイ・テヤン自身も何度かそこで検診を受けていることなど理由と見られる。 同一選手が複数回受けたことが確実な事例はクォン・オジュン(事例2・41・84)、イ・ドンヒョン(事例12・19・33)、チェ・ユゴン(事例15・48)、イム・チャンヨン(事例21及び海外球界での事例)、イ・ヒョンジョン(事例42・70)、イ・ジェウ(事例49・67)、チョ・ジョンフン(事例53・83・104)、カン・ジャンサン(事例59)、イム・ジュンソプ(事例76・105)の9例である。プロ入り後に3回受けたのは3人であるが、そのうちイ・ドンヒョンに関しては2度目は新たな靭帯の移植ではなく再固定のみなので、実質2回という考え方も可能である。 個別選手の故障歴に関しては、トミー・ジョン手術の事例数が多かったために調べきれなかったが、今後はそういったことも確認する必要があるかもしれない。 以上、韓国でのトミー・ジョン手術を概観した。このように日本に比べ韓国でトミー・ジョン手術が多いのは、前提として肘にメスを入れることに対する抵抗の大きさの違いがあると考えられるが、韓国がMLBを強く意識していることも理由として挙げられるだろう。但し、確かに韓国球界は全体としてMLBに即した方法の導入には柔軟だが、どれくらい体系的に導入されているのか、あるいは個別の事象が故障やパフォーマンスに与える影響の検証をどこまでした上で導入しているのかといった部分には疑問がある。またMLBで近年されている議論をどこまで踏まえているのか、あるいはMLBの球団ごとの方針の違いを理解した上でその中から適切なものを選んでいるのか等、考慮されなければならない点が多い。 韓国球界がMLBを参考にする傾向が強いことは明白ではあるが、MLBからの採り入れが表面的なものなのか、それとも検証を経た上でのものなのかは、韓国の中でも球団ごとに違いがあるのかもしれない。 また以前は、トミー・ジョン手術を受ければ(リハビリの強度に関係なく無条件に)球速が向上するという誤った認識が、アマチュア時代での必要以上の手術を助長することにもなった。韓国でトミー・ジョン手術文化が本当に根付くためには、MLBでの議論の単純な受け入れのみならず、蓄積されてきている国内リーグでの手術事例の考察や検証も必要ではないかと考えられる。 韓国のリーグ運営は最近はMLBを参考にしながらも、現実的にはNPBに近い部分もある。親会社に左右される球団経営、アマチュアの選手層などはMLBとの大きな違いであり、試合日程やロースターはMLBよりもNPBに似ている。そのため投手運用もMLB式を参考にしながら一部はMLB式とNPB式どっちつかずな面が見られ、それがMLBやNPBに見られないような形で選手の故障やパフォーマンスに悪影響を与えている可能性を否定することはできない。 それに加え、韓国では軍隊による約2シーズンの選手離脱という独自の問題を抱えている。トミー・ジョン手術に関して言うならば、どのタイミングで手術を行うことが選手のキャリアにとってプラスになるのか、リーグ全体で議論を具体化することも悪くないのではないかと思う。 トミー・ジョン手術以外のMLB式受容に関しても、そのまま受け入れるのが良いのか、あるいはNPBも参考にすべきなのか、それとも独自化傾向を強めていくのかというのは、当然現在でも議論されている部分ではあると考えられるが、MLBやNPBに対するより正確で同時代的理解が求められるのではないか。 現在の韓国でのトミー・ジョン手術の傾向の是非に関しては判断しかねる部分がある。韓国で手術にいたるまでの個別事例の検証が進んでおらず、また投手運用等が必ずしも体系的にMLB式を導入していないため、MLBの尺土でそのまま韓国を測ってよいのかわからないためである。韓国での検証が進めば日程等がMLBよりも類似しているNPBにその成果が還元されることもあるであろう。韓国でこれから自国リーグの事例検証が進んでいくことを期待している。※作成にあたって次のブログ記事(韓国語)を参考にした。ソース不明のものもあったため、本記事では採用しなかったものもある여구로그한국프로야구토미존수술명단

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