今季のKIAは10球団でも指折りの先発ローテーションを組むことができるかもしれない。昨シーズンの最優秀防御率のヤン・ヒョンジョンに加え、昨年はクローザーを担ったユン・ソンミンが先発投手に復帰し、左右の韓国人エースとしての活躍が期待される。 さらに新外国人のヘクター・ノエシとジーク・スプライルも先発ローテーションに加わる。特に前者は外国人選手全体2位の170万ドルという年俸が期待の高さをうかがわせる。 先発5番手は、昨年9勝6敗2ホールド、防御率4.10の成績を残したイム・ジュニョクが現時点で有力と見られる。外国人選手に関しては未知数な部分があり、これまでユン・ソンミンとヤン・ヒョンジョンが2人とも先発投手として同時に活躍した年が少ないというジンクスは不安であるが、ユン・ソンミンを先発投手に戻すことがローテーション強化に繋がるのは確実と見られる。 ユン・ソンミンは昨年51試合にリリーフ登板し30セーブをあげ、防御率も70イニングで2.96と良好であった。敗戦投手になることも少なくなかったが、苦しい展開でのイニング跨ぎを多く含みながらこの成績はさすがと言うべきであろう。彼が去ったリリーフ陣をどのように再構築するかは開幕を迎えるにあたってKIAの課題となる。 昨年リリーフ陣ではチェ・ヨンピルが安定した制球を武器に59試合63イニングを投げ5勝2敗10ホールド、防御率2.86という見事な数字を残した。また昨年途中にトレードでハンファから移籍してきたキム・グァンスも41試合43.2イニングを投げ4勝4敗9ホールド、防御率4.53とまずまずの活躍を見せた。 彼ら2人は経験豊富で頼りになるが、チェ・ヨンピルは今季KBO登録選手中最高齢、キム・グァンサムもベテランの域に達している。チームのリビルディングを図るキム・ギテ監督は現時点では若手投手により大きな期待をかけているように見える。 春季キャンプ前にクローザー最有力候補として名指しされたのは高卒7年目の左腕シム・ドンソプである。空振りを奪うことのできる直球は威力も十分。高い奪三振能力を持つが、一方で制球の乱れる場面も多く、69試合にリリーフ登板し3勝1敗21ホールド1セーブと大事な場面を多く任されながら、防御率は5.02と振るわなかった。現状ではクローザーとして起用するには好不調の激しさが課題となる。 課題克服のためには対右打者成績を改善させる必要がある。左打者に対しては被打率.203、被長打率.309と強い姿を見せた反面、右打者相手には被打率.253、被長打率.448と相対的に落ちる成績であった。また対戦打席数を考慮しても左打者からの方がよく三振を奪えており、対右打者の方が四球を許しやすくもなっている。 対右打者の制球を改善するため、シム・ドンソプは投球フォームの調整に取り組んできた。これまで右打者相手ではつま先が右打者のバッターボックス側に開く傾向にあったため、バランスが崩れ上半身に力が入っていたという。そこでブルペン投球等日頃の練習でつま先を意識しながら新フォーム定着を目指している。 まだ完全には定着していないと見られるが、春季キャンプでの実戦を通して新フォームを自分のものにすることを期待している。 シム・ドンソプの対抗馬として名前を挙げることができるのは高卒6年目の右腕ハン・スンヒョクである。昨季は49試合に登板し2勝6敗6ホールド、防御率5.46と課題を残した。だが直球の平均速度147.7km/hはリーグの韓国人投手3位(1位はキム・セヒョン(昨季までの名前はキム・ヨンミン)、2位はチョ・サンウ)であり、投げる球は素晴らしいものをもっている。だがやはり制球に問題を抱えており、そのことが成績にも悪影響を与えている。 ハン・スンヒョクは昨シーズン後半くらいから投球フォームを改めた。よりシンプルに投げようと意識しているように見受けられる。実際に四球を連発していたシーズン前半に比べると、コントロールが改善されつつある。 フォームの改良はシーズン終了後にも続き、指導したイ・デジンコーチへのインタビュー記事によると、変化球の制球にも自信をもつようになり、難しいカウントからでも変化球を投げられるようになったという。 2月13日の中日との練習試合ではMAX153km/h、2月17日の横浜DeNAとの練習試合ではMAX152km/hを記録するなど自慢の速球も健在であり、フォーム改良は順調に行っているものと見られた。 ところが2月24日の北海道日本ハムとの練習試合では1イニングを被安打1、与四球4、失点2と乱調。ワイルドピッチも記録してしまった。2アウトを取った後に崩れており、ランナーを背負ってから力が入り過ぎてしまったようである。それまでの対外試合で好投していた中で、この登板は不安を残す内容となった。ただ考え方を変えると、開幕までまだ時間がある中で新たな課題が見つかって良かったとも言える。 シム・ドンソプ、ハン・スンヒョクともに伸びしろ豊富で魅力的な若手投手である。だが最終回のマウンドを任されるにはまだ乗り越えなければならない課題が立ちはだかっている。開幕までの練習試合や示範競技でそれを解決していけるよう、2人で切磋琢磨していって欲しい。
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