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韓国プロ野球統一球導入問題

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「打球が顔に向かって来ていれば死ぬ可能性もあった」 5月29日のハンファ―ロッテ戦(ロッテのホームゲーム)、ハンファの先発投手アン・ヨンミョンはライナー性の打球を胸に受けて降板した。その出来事に対してハンファ監督のキム・ソングンが口にした言葉である。 さらにキム・ソングンは冗談を交えながらも次のように述べた。「公認球に問題が多い。ちゃんと当たっていなくてもとても速く飛んでいく」 昨年以来、韓国プロ野球ではリーグの公認球に関する議論が多い。韓国では公認球を複数のメーカーが製造しており、各球団はそれらのメーカー中からホーム試合で使用する製品を選択している。 昨年は公認球検査結果の公表が開始され始めたことに加え、リーグ防御率5.21という極度の打高投低に陥ったため、公認球の反発係数が注目を集めることとなった(打高投低の原因に関してはこの記事末尾にて言及)。 昨年は検査結果が5月と9月の2回公表され、反発係数の9球団平均(供給会社は4社)は1回目が0.42587、2回目が0.42940であり、2回とも全球団のホーム使用球が反発係数規定値(0.4134~0.4374)を満たした。一方でSKYLINE社の供給した公認球は2回目の検査で3球団中2球団が重量オーバーで検査不合格となった。 また今年の第1回検査ではH&D社の公認球が規定値より高い0.4414の反発係数を示し不合格となった。H&D社は昨年ロッテのホームゲームに公認球を供給したHARD社の子会社で、今年もロッテのホームゲームに供給している。 不合格になったメーカーは罰金を払って規定を満たす製品を納入しなおしているが、それにもかかわらず言及したということは、キム・ソングンが公認球の規格に対して神経を使っていたことを意味する。 2013年には中国で製造した野球ボールの原産地表記を消して韓国内で流通させたメーカーが関税庁に摘発されており、2014年のシーズン前には、それまでプロ野球で禁止されていた外国で製造したボールの公式球認定を許す代わりに原産地表記を義務づけた(なお同年にも中国産を国産と偽ったとしてSKYLINE社、BIGLINE社、ILB社が警察の捜査を受けた)が、それと同時に、以前から議論のあった単一公認球の導入を本格的に目指すこととなった。 昨今の打高投低と反発係数公表は単一球(日本で言うところの統一球)導入の議論に拍車をかけた。反発係数の高さが注目されただけでなく、競技の公平性の観点からメーカーごとの反発係数の差を問題視する声もある。実際に今年2回目の検査では反発係数が0.4200以下のもの(BIGLINE社、SKYLINE社)と0.4300以上のもの(ILB社、H&D社)に二分されており、平均値前後の反発係数を持った公認球が少ないため、使用球の違いが及ぼす影響は小さくないであろう(後掲表参照)。 2015年以降を目指していた単一球導入は今季開幕には間に合わなかったが、来季には実現する見込みとなった。KBOは2016年からの単一球導入のため、納品業者選定の入札を実施することを決めた(→KBO公式サイト報道資料)。これにより、現在の5社の公認球(5社のうちの1社であるZDスポーツ社の公認球を採用している球団は無い)をひとつの公認球に絞ることとなる。現在認定されている5社以外でも最近3年間に競技用野球ボールの売り上げが年間1億ウォンを超える国内ブランドの国内メーカーであれば入札に参加することができる。 今後、6月24日に書類提出締切、6月末にサンプル公認テスト、7月末に球団ごとの選手団評価、8月頭に評価委員会開催を経て8月中旬頃に納入業者が決定する予定となっている。 単一球導入が実現されると一部で問題視する意見が出されている「公平性」の議論が収まっていくことが期待される。また、選定の過程において公認球の品質が追求されていく可能性もある。 もっとも、単一球導入によって野球ボール供給が独占市場となってしまうことを懸念する声もある。韓国はアマチュア野球の裾野が日本ほどは広くない。韓国の野球ボール市場は約120億ウォンであり、そのうちプロ野球での需要が全体の約40%に当たる50億ウォン(うち20~25億ウォンが公認球)を占めていると推定されている。仮に単一球を1軍のみの採用にして2軍は各球団に任せるという方法をとったとしても、大多数の球団は1軍使用球と同じメーカーを使いたがるとみられ、効果は限定的である。一度選定されると最大で3年間入札が行われないため、選定業者以外はその間の収益確保が困難になる。もし競合メーカーが廃れると品質の維持が疎かになる危険性がある。 一方で納入業者に選定されると莫大な利益が生じるため、業者と野球関係者との癒着の恐れも生じる。すでに市場では「KBOが競技運営委員、技術委員をはじめ野球専門記者、ジャーナリスト、外部の者で選定委員を構成するだろう」という噂まで出回っているらしい。 あくまでもこれらの問題は可能性に過ぎない。だが何らかの対策は必要になってくるかもしれない。 単一球の導入には、原産地表記等を含めた公認球の品質や信頼の問題、極度の打高投低の一因となっているとも言われている反発係数の問題、そして球団ごとの公認球の違いによる公平性確保などの問題が背景にある。 単一球導入によってこれらの問題を解決することができるのかははっきりとしない部分が多い。打高投低の問題は反発係数以外にも様々な要因が考えられる上に、単一球にすることが反発係数を引き下げることと同義ではない。 また、NPBの統一球導入がそうであったように、単一球導入は新たな問題を引き起こす可能性すら内包している。しかし、単一球導入がきっかけとなり様々な問題解決のための議論が一歩前進することを期待している。 もっとも、この単一球導入問題で重要なのは、ボールにまつわる問題を解決することよりも、選手や監督の不安や不満、違和感を取り除くことにあるのかもしれない。プロフェッショナルであるが故、用具の細かな違いが気になるのではないか。用具の違いだけなら問題はそこまで大きくないが、それが自身の成績に関わってくるとなれば話は別である。そのための単一化であると考えれば、問題解決に直接的影響を及ぼすかはあまり関係無く、実施すること自体に意味があるのかもしれない。<参考表>2015年KBOリーグ公認球第1回及び第2回検査結果※表はKBO公式サイト報道資料を基にして作成〔第1回検査結果〕〔第2回検査結果〕備考欄のメーカー別採用球団は次の記事を参考にした http://sports.news.naver.com/sports/index.nhn?category=kbo&ctg=news&mod=read&office_id=241&article_id=0002421136 <参考記事> http://sports.news.naver.com/sports/index.nhn?category=kbo&ctg=news&mod=read&office_id=241&article_id=0002421136 http://sports.news.naver.com/sports/index.nhn?category=kbo&ctg=news&mod=read&office_id=108&article_id=0002427241 http://sports.news.naver.com/sports/index.nhn?category=kbo&ctg=news&mod=read&office_id=108&article_id=0002422033 http://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=sec&sid1=102&oid=001&aid=0007104400 http://sports.news.naver.com/sports/index.nhn?category=kbo&ctg=news&mod=read&office_id=109&article_id=0002705907

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